対人関係でもう悩まない!「イエス」と答えやすくして肯定的な空気をつくる交渉術

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対人関係でもう悩まない!「イエス」と答えやすくして肯定的な空気をつくる交渉術

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

対人関係でお悩みの方は少なくないと思いますが、そのことについて『頭のいい人の対人関係』(犬塚壮志 著、サンクチュアリ出版)の著者は興味深い指摘をしています。

頭のいい人は、対人関係を「交渉」によってつくっているというのです。

なお交渉とは「かけあうこと」ですが、それだけでは定義として不十分なのだとか。なぜなら。そこには「有利な合意を目指すことと」という重要な部分が欠けているから。そのため著者は、次のように考えているそう。

交渉とは、ある問題やある議題について相手と話し合い、丸め込まれることなくあなたにとって有利な合意にいたること。

交渉術とは、ある問題やある議題について相手と話し合い、あなたにとって有利な合意を勝ち取るテクニックです。(「はじめに」より)

家電量販店で納得できる値引きに成功するのも、上司から自分のスケジュールに合わせた休暇の許可を得るのも、知り合いからの面倒なお願いをスマートに断るのも、すべて有利な交渉が生んだ対人関係の結果だということ。そして、もうひとつ大切なことがあるようです。

交渉とは、相手を論破することでも、打ち負かすことでもありません。

「頭のいい交渉術」を身につけると、あなたは有利な合意を得ながら、交渉相手との人間関係をより良くしていくことができるのです。(「はじめに」より)

つまり交渉術の本質は、自分が望む最高の結末と、相手の納得感を重ね合わせることにあるということ。そこで本書では、著者がこれまでに知り得てきた「頭のいい人」の交渉に関する知見をまとめているわけです。

きょうは第2部「対人関係構築のステップ別交渉術」内の「2-1 仕込み期 対人関係をスタートする」のなかから、「『はい』と答えさせて肯定的な空気をつくる」に注目してみたいと思います。

「イエスセット話法」でラポールをつくる

交渉でもっとも重要なことはなにかと問われたら、果たしてなんと答えるでしょうか? もちろんいろいろな回答があるでしょうが、著者はそのひとつに「空気づくり」があると考えているのだそうです。

ちなみに「場の空気」は交渉結果を左右するものですが、その表現はあいまいなものでもあります。そこでここでは、「場の空気」=「相手を含めた周囲の人たちが見せる所作と、自分がそれを察知したときの感覚や感情の集積」と定義して話が進められています。

ともあれ場の空気づくりは、難しい提案を通す際にはとても重要

たとえば新規事業の立ち上げのための投資を社内役員に仰いだり、雑談で出てきた小さなアイデアを企画として通したかったり、不要な慣習やルールを無くしたり、一度決まった契約を破棄したかったり、代償さまざまなシチュエーションがあるものですが、そんなときに「場の空気づくり」が大きな意味を持つわけです。

そして、自分に有利な場の空気をつくる手段として著者が勧めているのが「イエスセット話法」というテクニックです。

最初のポイントは、相手が絶対に「イエス」といってしまいそうな気軽な質問を数回行うこと。すると、本命の提案に入る前の段階で、その場に「イエス」といいやすい肯定的な空気が生まれるというのです。

たとえば、社内でのデータの取り扱いにおいて非効率なルールがあり、そのルールにかかわる簡単な質問を出す際の質問を会議で出すとしましょう。

「データを探す時間って本当に無駄じゃないですか?」

→(相手の心の中:うん、確かにそうだよな)

「ちなみに、顧客データってすごく重要ですよね?」

→(相手の心の中:そりゃそうだ)

「それじゃあ、顧客データは一元化しませんか?」(本命の提案)

(78ページより)

イエスセット話法はこのように、相手が確実に「イエス」といってしまう、納得や共感を得られるような質問を数回投げかけることがポイントなのです。

ここで用いられているのは「ラポール」という理論であり、その場にいる人への信頼感から生まれる調和的な関係を意味します。

ラポールを形成することで「心理的安全性(相手が組織やチームのなかで、自分の意見や考えを誰にでも安心して伝えられるような状態)」をつくることができるため、相手の緊張感がほぐれ、本音を引き出しやすくなるわけです。(78ページより)

ラポール理論習得のコツ

なお著者によれば、「イエス」と答えてもらえそうな質問が用意できなかったとしても、ラポールをつくることができる方法があるのだそうです。

まず相手に「この◯◯について、どう思いますか?」と質問。そこで相手が「□□だと思います」と答えたら、「□□ですか。なるほど。いいですね」と肯定しましょう。

相手のいったことに自分が「イエス」と同調するわけです。

ポイントは、相手の回答をオウム返ししながら同意する姿勢を示すこと。このテクニックを「バックトラッキング」といいます。(78ページより)

するとその結果、相手の潜在意識のなかにラポールがつくられるわけです。この方法は大人数が参加しているセミナー会場などでも応用することができ、複数人に対してバックトラッキングを行うと、会場全体がラポールに包まれるのだそうです。(78ページより)

バックトラッキングを用いる際の注意事項

相手と1対1のシチュエーションでバックトラッキングを使う際の注意点は、バックトラッキングを乱発しないこと。1対1のシチュエーションにおいて相手の発言を頻繁にオウム返しし続けると、逆に不自然で怪しまれてしまうからです。

したがって、交渉の冒頭や、もしくは険悪なムードになってきたなと感じたときなどに絞り、さりげなくオウム返しする程度にとどめるべきだということです。(79ページより)

頭のいい人と同じような対人関係をつくれるようにするための交渉術が55種にまとめられた実用性の高い一冊。

辞書を引くようなイメージで、自分に必要な部分を読むことができるわけです。対人関係で悩んでいらっしゃる方は、ぜひとも参考にしたいところです。

Source: サンクチュアリ出版

メディアジーン lifehacker
2023年1月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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