『語学の天才まで1億光年』
- 著者
- 高野 秀行 [著]
- 出版社
- 集英社インターナショナル
- ジャンル
- 文学/日本文学、評論、随筆、その他
- ISBN
- 9784797674149
- 発売日
- 2022/09/05
- 価格
- 1,870円(税込)
書籍情報:openBD
「語学の天才まで1億光年」高野秀行著(集英社インターナショナル)
[レビュアー] 鵜飼哲夫(読売新聞編集委員)
日本語以外は外国語、語学習得の基本は文法と思っている日本人が読んだら、一読三嘆するだろう。
学んだ言語はコンゴの公用語フランス語から共通語のリンガラ語、村の中で親族などと交わすボミタバ語など25以上という辺境ノンフィクション作家は、文法の「正しさ」よりも現地で「ウケる」ことが大事と考えている。だから、言語特有のノリや癖を物真似(ものまね)するのが早道と説く。
タイ語なら〈ガラス細工を扱うかのように優しく喋(しゃべ)る〉。中国語は語気強く、遠慮がないようにしゃべり、日本語なら恥ずかしげにするのが“正解”。ただし、やり過ぎると過度の親近感から舐(な)められるのでご注意を、という指摘まで、すべて実体験の裏付けがあるから説得力が抜群だ。
文字と発音の関係が迷路のようなフランス語などに比べると、整然としたスペイン語はまるで〈言語界の「平安京」〉という解説には唸(うな)らされた。
このほかにも……19歳から10年間の青春珍道中記でもある本書を紐解(ひもと)けば、言語を通した世界探検を追体験できること、請け合いだ。