『説明がうまい人はやっている 「数学的」話し方トレーニング』
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「頭がいい人」の話し方のポイントは、数学的に「導入→主張→解説→結論」で話すこと
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
話し方についての悩みを抱えている方は、決して少なくないはず。そこでご紹介したいのが、『説明がうまい人はやっている「数学的」話し方トレーニング』(深沢真太郎 著、PHPビジネス新書)。著者によれば、話し方についての悩みは、「数学的な話し方」を身につければ解決することができるそうなのです。
だとすれば、数学的な話し方とはどのようなものなのかを知りたいところですが、その骨格になるのは次の3つ。
・「数学」と「数学的」は違う
・「話し方」は「思考」で決まる
・「数学的思考」ができれば「数学的に話す」もできる
(「はじめに」より)
また、数学に対するイメージ(非王弟式や図形の問題などを解くイメージ)を捨ててみることも重要。本書にも、そういった“数学の話題”はほとんどないようです。
私が本書で提案する「数学的な話し方」は数字(ナンバー)を入れて話すことではありません。
ビジネスにおいては数字を入れて話すことは重要だとされます。「売上が好調です」ではなく「売上が前月比150%です」と話す方が伝わることは誰もがよくご存知だと思いますが、これが数学的に話すということではありません。
「数字で話す」ではなく「数学的に話す」
こう認識して読み進めていただけると幸いです。
(「はじめに」より)
こうした考え方に基づく本書の第2章「数学的な話し型〜『頭がいい人』の話し方を科学する」から、要点を抜き出してみることにしましょう。
著者がここで提案しているのは、実際に企業研修や取材などの場で実践している「話し“型”」です。
「頭がいい人」の話し方を科学してみた
著者は、「頭がいい人」を「説明がうまい人」と定義しています。「頭がいい人」は多くの場合、なんでもわかりやすく説明できる人ではないかというのです。
「頭がいい人」の話し方を観察していると、やはり共通点やポイントのようなものがあることに気づきます。それは決して難しいことではなく、とても基本的で誰でもすぐに実践できることです。(49ページより)
では、そんな話し方の型、すなわち「話し型」とはどのようなものなのでしょうか?(46ページより)
導入→主張→解説→結論
著者が勧めているのは、「導入→主張→解説→結論」という型で話すこと。
まず導入とは、本題に入る前に(必要であれば)すること。主張は、その話の主たるメッセージ。次いでその解説を行い、最後にまとめる意味で結論を伝えるわけです。
ここで紹介されているのは、就職活動をしている学生が面接官に自分の強みを伝える際の例。
私自身がそう思っているというよりは、周囲からよくそう指摘されるので、それを「私の強み」と定義してお伝えします。(導入)
私の強みは行動力だと思います。(主張)
エピソードを2つご紹介します。まず、アルバイトにおいて積極的に新しい仕事にチャレンジしています。大学においても自分で新しいサークルを立ち上げ、メンバーは1ヶ月で100名を超えました。(解説)
人が面倒だと思うこともあまり気にせずすぐに行動に移せてしまうところがあるので、私の強みはおそらく行動力なのだと思います。(結論)
(50〜51ページより)
著者によれば、これは基本の型。プライベートでの会話はともかく、就職活動の面接のようにお行儀よく話す必要がある場合には、基本に忠実にこの型で話すといいというわけです。(49ページより)
「導入」と「解説」がすべて
なお「導入→主張→解説→結論」のうち、話す内容を考えるにあたって悩む必要のない箇所は「主張」と「結論」。上記の例でいえば、「行動力が強みだ」という“主張したい事実”が先にあるので、考えたり悩んだりする必要はないわけです。したがって、話をする際に悩む箇所は「導入」と「解説」ということになるのです。
「導入」で悩む
→「本題に入る前に何か話しておかなきゃいけないことはあるかな……」
「解説」で悩む
→「どう説明して主張に納得してもらおうかな……」
(56ページより)
つまり、人の話し方において差が生まれているのは、この2つのいずれか、あるいは両方だということ。では、どうすればその質が上がるのでしょうか? その問いに対する答えが、「定義・分解・比較・構造化・モデル化」なのだそうです。
具体的には次のように関連します。
「導入」ですること:定義をする
「解説」ですること:分解・比較・構造化・モデル化を組み合わせる
(57ページより)
まず「導入では、その後の「主張」をするにあたって必要な定義をするべき。
定義とは、「Aとは〜である」と定めること。「解説」については、先の就職活動する学生の事例の「解説」を思い出せばわかりやすいはず。
エピソードを2つご紹介します。まず、アルバイトにおいて積極的に新しい仕事にチャレンジしています。大学においても自分で新しいサークルを立ち上げ、メンバーは1ヶ月で100名を超えました。(58〜59ページより)
アルバイトの話とサークルの話、2つの要素に分解されたこの内容が、わかりやすい例だということです。(55ページより)
著者は、ビジネスパーソンに向けて研修の講師を行っている人物。つまり仕事の大半が話すことであるわけですが、話し方が「数学的」であるからこそ、多くの信頼を勝ち取ることができたようです。
つまり本書には、経験を軸とした「数学的話し方」が凝縮されているわけです。話し方をレベルアップさせたいなら、読んでみる価値がありそうです。
Source: PHPビジネス新書