「否定しない技術」を活かすだけ、人間関係が劇的に変化する会話のテクニック

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「否定しない技術」を活かすだけ、人間関係が劇的に変化する会話のテクニック

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

人間関係を良好なものにするための手段として、「褒める」「肯定する」「叱る」の重要性が強調されることがあります。

ところが、多くの経営者、マネジメント層、ビジネスパーソンと接してきたという『否定しない習慣』(林 健太郎 著、フォレスト出版)の著者は、違った考え方を持っているようです。

人間関係でもっとも大事なことは、「相手のことを否定しない」ことなのです。これこそが褒めたり肯定したり、叱ったりするよりも何倍も効果的で、いい結果につながる人間関係をよくするシンプルな方法なのです。(「はじめに」より)

多くの人は自覚しないまま、つい相手を否定してしまいがち。しかし、そんな「無意識の否定の習慣」を「否定しない習慣」に変えることで、人間関係は劇的に変化するというのです。

注目すべきポイントは、否定しないコミュニケーションがもたらしメリットの大きさ。たとえば人に好かれやすくなったり、建設的な会話が増えるようになったり、ネガティブな思考が減っていったり、人間関係のトラブルが減ったり、他にもさまざまメリットがあるというのです。

やるべきことはシンプル。ですが効果は絶大。

「褒められる」「肯定される」よりも「否定されない」ことがいい人間関係を築く鍵なのです。(「はじめに」より)

しかも「否定しない」ことはプロのコーチが実践している技術であるため、決して難しいことではないのだとか。したがって、誰でも意識的に身につけることができるというのです。

そこで第3章「否定しない技術」のなかから、すぐに役立てることができそうなメソッドを抜き出してみましょう。

イエス・エモーション話法で人間関係が変わる!

否定しない技術として、「イエス・バット(Yes, but)話法」が紹介されることがあります。しかし、実際のところこれはほとんど使えないと考えるべきだと著者は述べています。

そもそも「イエス・バット話法」は、相手の話や意見に対して「そうだね」と肯定したあとに「でもさあ」「とはいえ」「だけどね」など、否定のことばをつなぐ話法。反論したいときに否定を和らげる方法だと考えられているものの、否定することには変わりないわけです。

そのため最近では、肯定のあとで否定しない「イエス・アンド話法」が一般的になってきているようですが、ここで勧められているのは著者が独自に開発したという「イエス・エモーション(Yes, emotion)話法」肯定のことばに加えてポジティブなプラスの感情を伝える話法であるため、相手をより気持ちよくさせることができるというのです。

「仕事、頑張っているんだね。頼もしいと感じたよ」

「テストの点がよかったんだね、すごく嬉しいよ」

(97ページより)

たとえばこのように肯定し、そのときの自分の“ポジティブなプラスの感情”を伝えるという方法。そうすることで相手の承認欲求を満たすことができるため、関係がいい方向に向かうというわけです。

そして、そのあとに自分がいいたいことを伝える。それは同調する意見であっても、相手と異なる意見であってもOKだといいます。(96ページより)

「能動的に黙る」ことを覚える

著者によれば、「ことばを返す前にブレーキを踏む」ことも「否定しない」ための大事な技術。会話で「ブレーキを踏む」とは、まずは「黙りましょう」ということであるようです。

「否定しない」とは、いいかたを変えれば「相手の意見・考え・ことばを受け入れる」こと。コミュニケーションのトラブルの多くは、相手を受け入れることなく、脊髄反射的にことばを返したりするところからはじまるわけです。

たとえば、SNSによるトラブルがそのいい例。相手のSNSに悪口や意地悪なことばを書いてしまうとき、その人は相手がどう思うかなど考えていないはず。ただ反射的、感情的に書き込んでいるわけで、そこに問題があるのです。

脊髄反射的なコミュニケーションから抜け出すために、まずは「能動的に黙る」という習慣をつくることが大切です。

反射的に言葉を返すのではなく、いったんブレーキを踏んで相手の言葉を聞き、伝えたいことや相手の状況や感情を理解する。これによって、つい否定してしまうことがかなり少なくなります。(101ページより)

「沈黙は金」ということばがありますが、沈黙には多くを語る以上の価値があるわけです。(100ページより)

相手の話が終わってから、2カウント待つ

黙って相手のことばに耳を傾ける際には、「相手が話終わるまで黙ったまま」が大原則。途中で口を挟みたくなるかもしれませんが、話をさえぎった時点で立派な「否定」だと思うべきだと著者は主張するのです。そして相手が話し終わったなと感じたら、そこから最低でも約2秒は沈黙を続けることが大切

なにしろずっと話したい欲求を抑えていたわけですから、相手の話が終わったとみるや勢いづいて話しはじめてしまいがち。

しかも、そうやって発したことばは否定になりやすくもあるのです。だから「聞いたあと」こそ、自分を冷却する約2秒の時間が必要だということ。

また、その約2秒を頭のなかでカウントすることも大切。なぜならそうすれば、意識をそちらへ向けられるから。カウントしている間に、これから自分が口に出そうとしていることばが、相手に対する否定になっていないかを冷静に確認するのです。

一瞬であっても意識的に思考を巡らせる時間があることが大事なのです。思うに任せて、相手の言葉に反射的に反応して否定を返さない。

相手の言葉が終わったあとの数秒は、相手を否定しないためのリスクヘッジの時間だと思ってください。(106ページより)

否定して嫌われるより、沈黙して平和な関係性を保つべきだということです。(105ページより)

「否定しない」ためのコミュニケーションの技術を知り、「否定しない」ことを意識することが、「否定しない習慣」になるのだと著者はいいます。それを身につけることができれば、人間関係が劇的に変わるのだとも。

人間関係を改善し、よりよい人生を送るために、是非とも本書を活用したいところです。

Source: フォレスト出版

メディアジーン lifehacker
2023年1月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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