『江戸絵画 八つの謎』
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【気になる!】文庫 『江戸絵画 八つの謎』狩野博幸著
[レビュアー] 産経新聞社
「八つの謎」とは、江戸期に活躍したアクの強い8人の絵師(岩佐又兵衛、英一蝶(はなぶさ・いっちょう)、伊藤若冲(じゃくちゅう)、曾我蕭白(しょうはく)、長沢芦雪(ろせつ)、岸駒(がんく)、葛飾北斎、東洲斎写楽)にまつわる謎である。幅広い文献資料から生身に近い人間像に迫ることで、絵に隠された意味を読み解いていく。
謎といえば写楽。でも著者はそんな紋切り型表現を批判する。そして、正体は版元の蔦屋重三郎だ、北斎だ…などと別人説がいつまでも残り、「実像」を正視しようとしないと世の状況を憂う。固定したイメージに縛られず、虚心に人と作品を見ることが真相への近道なのだろう。(ちくま文庫・1100円)