情報の集めすぎが判断を誤らせる。限られた時間で正解に導くための思考習慣

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24 TWENTY FOUR : 今日1日に集中する力

『24 TWENTY FOUR : 今日1日に集中する力』

著者
堀田, 秀吾, 1968-
出版社
アスコム
ISBN
9784776212430
価格
1,650円(税込)

書籍情報:openBD

情報の集めすぎが判断を誤らせる。限られた時間で正解に導くための思考習慣

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

現実問題として、時間を有効活用することはなかなか難しいものです。そのことについて悩む人は多いだけに、「24時間をいかに使うか」という問いは人間にとっての永遠の課題だとさえいえるかもしれません。

しかし逆にいえば、「きょう1日をどう使うか」は、自分の判断に委ねられているということにもなるはず。

では、24時間をどう使うことが、ビジネスの成功や充実した人生につながるのでしょうか? この問いに対し、『24 TWENTY FOUR 今日1日に集中する力』(堀田秀吾 著、アスコム)の著者は次のように述べています。

24時間をもっとも有効に使う方法は世界中の叡智により明らかになっています。

答えは、「今、目の前のことにただ集中すること」。

未来のためでもなく、生産性や効率化を求めるためでもなく、ただ、目の前のことに集中する。(「はじめに」より)

時間を忘れるほどなにかに集中できたとき、つまり“ゾーンに入った”ときには、大きな充実感や満足感、幸福感を味わえるもの。それは、なにかに集中している間は、ほかのことを考えられなくなるからなのだといいます。

とはいえそれは、当たり前で簡単なようで、実践するのが難しいことでもあります。なぜなら現代社会には、“やるべきこと”に集中することを妨げるものがたくさん存在しているのですから。

そのため自分で自分をコントロールすることができなければ、一度しかないきょう1日を誰かのために消費し続けることにもなりかねないのです。

そこで本書では、世界中の一流研究機関の研究者たちによって行われてきた実験、研究を紹介しながら、「きょう1日に集中するためにはどうすればいいか」を探っているわけです。

第2章「24時間に『集中』するための準備」のなかから、「「いま、目の前のことに集中する」というマインドをつくりあげる」という項目に焦点を当ててみることにしましょう。

情報の集めすぎが判断を誤らせる

著者によれば、目の前のことに集中するために、そして不安に翻弄されず、冷静で適切な選択をするために大切なことがあるのだそうです。それは、情報を集めすぎないこと。

現代社会においては、とかく情報の重要性が強調されがちです。とはいえ、多くの情報を集めることができれば確実な答えが見つかるというわけではありません。それどころか、情報を集めれば集めるほど答えがわからなくなり、不安が増幅したり、判断を誤ったりする可能性が高まる可能性もあります。

事実、情報の集めすぎが判断を誤らせることは、さまざまな調査結果からも明らかになっているようです。

たとえばそれは、オランダのラドバウド大学のダイクスターハウスらの実験にも明らか。

中古車とサッカーの試合を使って2つの実験を行った結果、いずれの実験でも、短時間で決めたグループのほうが正解率が高かったというのです。

実施者:ダイクスターハウス(ラドバウド大学)ら

方法:お買い得な「当たり」1台を含む4台の中古車を用意し、被験者を、①よく考えて選ぶグループ、②選ぶための時間が少ない(制限時間が設定され、しかもパズルなどを解かなければ車を選べない)グループの2つに分ける。

第1段階では、両方のグループに「燃費」や「エンジン」など、4つのカテゴリーについて車の説明をしたうえで、当たりの車を選ばせる。

第2段階では、説明のカテゴリーを12個に増やし、「トランクの大きさ」「ドリンクホルダーの数」などについても伝えたうえで、当たりの車を選ばせる。

結果:第1段階では①のグループと②のグループの半数以上が当たりの車を選んだが、第2段階では、②のグループの60%が当たりを選んだのに対し、①のグループで当たりの車を選んだ人は25%を切った。(110〜111ページより)

実施者:ダイクスターハウス(ラドバウド大学)ら

方法:被験者を、①よく考えて選ぶグループ、②当てずっぽうで選ぶグループ、③選ぶための時間が少ない(パズルなどを解かなければ選べない)グループの3つに分け、サッカーの試合の勝敗を予想させる。

結果:もっとも正解率が高かったのは③のグループで、正解率は①と②のグループの3倍以上になった。(111ページより)

なぜ、このような結果になったのでしょうか?

まず注目すべきは、短時間で決めなくてはならないグループのケースです。彼らの場合は時間がないぶん、情報に正しく優先順位をつけて選択を行うことができたわけです。

一方、よく考えるグループは、時間があるからこそ情報を集めすぎてしまい、そのため細かいことが気になって、物事をシンプルに、大局的に考えられなかったということが考えられるのです。

研究結果が教えてくれる意外なこと

この結果が教えてくれるのは、「情報が少なすぎるのも問題ではあるが、たくさんの情報を集め、十分に検討したからといって、いい決断ができるとは限らない」ということ。

むしろ情報が多すぎたり、検討を重ねすぎたりすると、正しい判断をくだせなくなることもあるのです。

不安を解消しようと情報を集めても、現実は変わらないと著者が主張しているのは、こうした理由があるから。

したがって、「これ以上検索しても、不安が解消しない」「情報を集めることに、膨大な時間を費やしてしまっている」「24時間を有意義に過ごせていない」と感じたら、すぐにスマホやパソコン、テレビなどから離れるべき。

そして、不安と情報によって見えなくなってしまったら「いま、目の前にある、やるべきこと」に手をつけることが大切なのだと著者は主張しています。

やるべきことを後回しにし、情報を集めることに追われ、その結果として誤った選択をしてしまったとしたら、その24時間にはなんの意味も価値も見出すことはできません。

本当に大切なのは、情報でも選択でもなく、目の前のやるべきことをどれだけやったかその積み重ねが、自分自身の未来をつくるわけです。(108ページより)

「きょう1日をどうすごすのか」という人類永遠の課題に対し、自分自身の答えを出せるのは当然ながら自分だけ。だからこそ、自分だけの一歩を踏み出すことが大切なのだと著者はいいます。

最高の24時間を手に入れるために、本書を参考にしてみてはいかがでしょうか?

Source: アスコム

メディアジーン lifehacker
2023年1月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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