『僕たちに残されている時間は「朝」しかない。』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
理想の睡眠時間はなぜ8時間?ある実験結果から見えてきた差が出る「朝の過ごし方」
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
1日24時間は、すべての人に平等に与えられたもの。
にもかかわらず、時間をただ浪費させるだけの人もいれば、次々と目標を達成してスキルアップやキャリアアップを重ねていく人もいます。その差は、いったいどこから来るのでしょうか?
「それは、ビジネスパーソンに唯一残された時間を無駄にしているか、有効に使っているかの差でしかない」と指摘するのは、『僕たちに残されている時間は「朝」しかない。』(石川和男 著、総合法令出版)の著者。だとすれば、唯一残された時間とはいつなのかが気になるところですが、それは「朝の時間」なのだそうです。
著者は、その根拠を列記しています。少し長くなりますが、引用してみましょう。
アメリカのハーバード大学、マリアム・コーチャキは、さまざまな実験により、人の心は時間帯によって変化し、朝のうちは理性的で道徳意識が高いという結果を得ました(朝の道徳効果)。
時間がたつにつれ、集中力も切れ、自分で自分を律する精神力、つまりセルフ・コントロール力が薄れてきます。
逆に精神力を使い果たしていない朝は、前向きに物事に取り組むことができるのです。
また、ドイツにあるライプチヒ大学のクリストフ・ランドラーは、「朝型の人は、夜型の人より、先を見越した行動ができ、ビジネスも成功する確率が高い」と語り、さらに毎朝同じ時間に起きる人は、エネルギーにあふれ意欲的な人であるという特徴を見つけました。
このことは、同じ時間に起き「将来に影響を及ぼすことを、意欲的に毎朝やり続ける時間にする」という、本書のテーマと一致しています。
さらに、デンマークにある国立社会調査センターのヘンリック・シーバートセン、コペンハーゲン大学のマルコ・ピオべザンとフランチェスカ・ジーノは、1日の時間帯が学生の学業成績に及ぼす影響を調べました。その結果、学校に登校してから時間がたてばたつほど、試験の成績は下がっていったのです。(「はじめに」より)
当然ながら、時間がたてば脳も体も疲れます。
だからこそ夜ではなく、まだエネルギー満タンの朝に人生を変える行動を取るべきだということです。そんな考え方に基づく本書のなかから、きょうは第4章「朝時間を確保する! 超高速時間術」に焦点を当ててみたいと思います。
理想の睡眠時間は?
自分にとっての理想的な睡眠時間は何時間か?
それはぜひ知っておきたいところですが、そのことに関連し、ここではある実験が紹介されています。普段から1日平均7〜8時間睡眠を取る健康な男女48名を集め、ペンシルベニア大学とワシントン州立大学が行ったもの。
実験では、48名を「3日間眠らずに過ごす」「1日4時間眠る」「1日6時間眠る」「1日8時間眠る」という4つのグループに分けて14日間生活してもらいました。
その結果、実験期間中に脳が適正に働き続けたのは8時間睡眠のグループだけで、残りは、認知機能・注意力・運動神経などが、日を追うごとに低下しました。
さらに、この実験では、「睡眠不足でパフォーマンスが低下しても、本人は気がつかない」という興味深い結果も得られたのだとか。
つまり、「最近、寝不足が続いているけど、意外に平気じゃん」なんて思っていても、脳のパフォーマンスは確実に低下しているのです。(94〜95ページより)
もちろん、睡眠不足は勉強効率も落とすことになります。眠気と戦いながら一生懸命勉強を続けるより、もう少し長く眠ったほうが高い成果を出せるかもしれないわけです。
短い睡眠時間でも大丈夫だという「ショートスリーパー」といわれる方もいらっしゃいますが、あくまでそれはごく一部の人々。大多数の方は7時間以上の睡眠が必要だと考えてほうがよさそうです。(88ページより)
安眠のために気をつけたい5つのこと
なお、ここでは安眠のために著者が気をつけている5つのことが紹介されています。
1.帰りの電車で眠らない(96ページより)
帰りの電車で寝てしまうと深い眠りにつけないため、著者は電車で寝ないようにしているのだそうです。帰りの電車では、本を読む、もしくは朝に行った勉強の検証や改善を行う時間にすると決めているそう。
2. 夜はカフェインを取らない(96ページより)
夜にコーヒーや紅茶などに含まれるカフェインを取ると、興奮して寝つきが悪くなってしまうもの。そこで著者はカフェイン飲料を、就寝3時間前までには飲み終えるようにしているのだといいます。
3.寝る前にブルーライトを浴びない(96ページより)
寝る前には、携帯電話やパソコン画面のブルーライトを浴びないようにすることも大切。また、就寝30分前は電気機器を使用しないことも大切であるようです。なぜなら人間の脳は、暗くなったら眠るようにできているから。
4.太陽光で目覚める(96ページより)
人間の脳は、光を浴びてから約16時間後に眠くなるのだといいます。つまり太陽光で目覚めると、その日の夜、よい眠りにつけるということ。ちなみに著者は太陽光で目覚めることができるように、カーテンを開けたままで寝ているそうです。
5. 寝だめの習慣をやめる(97ページより)
「食いだめと寝だめはできない」といわれますが、まったくそのとおり。寝だめは生活リズムを崩し、寝つきを悪くするだけなのです。そう主張する著者は、たとえ休日でも普段より1時間多く眠る程度と決めているといいます。
以上の5点ですが、すべてを取り入れる必要はなく、「自分にもできる」と思ったものから実践してみればいいのだとか。
いずれにしても、自分に合った睡眠時間を確保し、安眠できれば、朝の脳は絶好調になるはず。だからこそ、自分にとってベストな睡眠時間を見つけるべきだというわけです。(95ページより)
過去にも著作をご紹介してきたのでご存じの方もいらっしゃるでしょうが、著者は5つの仕事(建設会社の総務経理、大学講師、税理士、時間管理コンサルタント、セミナー講師)をしている人物。にもかかわらず時間に追われていないのは、朝時間を有効活用しているから。つまり本書は、著者の実体験に基づいて書かれているわけです。
時間をより有効に使いたい方は、参考にしてみるといいかもしれません。
Source: 総合法令出版