青い瓦屋根に白い塗り壁「あのマンション」を徹底解剖!

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秀和レジデンス図鑑

『秀和レジデンス図鑑』

著者
谷島香奈子 [著]/haco [著]
出版社
トゥーヴァージンズ
ジャンル
工学工業/建築
ISBN
9784908406935
発売日
2022/02/22
価格
2,090円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

青い瓦屋根に白い塗り壁「あのマンション」を徹底解剖!

 1964年、東京オリンピックの開催年に第1号が竣工して以来、全国で130棟以上も建てられた人気マンションシリーズ「秀和レジデンス」。名前は知らなくとも、青い瓦屋根、白いモコモコの塗り壁、アイアン柵のバルコニー……といえば、ピンとくる人もいるだろう。ひと目でそれとわかる、特徴的な外観に加え、日本のマンションブームと深く結びついた歴史に魅了されたファンも多い。

 本書は秀和レジデンス専門の不動産サイトまで立ち上げてしまった谷島香奈子氏と、『かわいい秀和レジデンス』という写真集まで作ってしまったhaco氏の“秀和レジデンス愛”が詰まった一冊だ。壁の塗り方やタイルのパターンの違いなど、こだわりのデザインの細部を豊富な写真と共に紹介するのはもちろん、実際の暮らしぶりやリノベーションの様子、竣工当時の時代背景にいたるまで詳細にレポート。発売当初こそ企画のマニアックさで注目を浴びたが、“うちの近くにもある!”“そういえば実家がこのマンションだ!”といった声をあげる人がSNS上に続出。一年経った今も本書を手に全国の秀和レジデンスを“巡礼”する読者を生むほどのブームとなっている。

「秀和レジデンスはヴィンテージマンションの中でもちょっと特別な存在。建物なんだけれど生き物みたいというか、居住者の皆さんが“育てている”ような感覚に近いんだと思います」と担当編集者は語る。

 理由の一つはマンション管理のありようだ。今でこそ管理組合方式が採用されているマンションは珍しくないが、秀和レジデンスはその先駆けだった。

「参宮橋の秀和に竣工当時から住んでいる方に写真を見せてもらったんですが、何十年も前の姿のはずなのに今と全く変わっていない。それだけ住人の皆さんが協力して丁寧にメンテナンスしてこられたということなんですよね」(同)

 本書の「おわりに」にこんな言葉がある。〈かわいいは簡単に壊せるけれど、簡単にはつくれない〉。社会全体が合理化を求めて突き進んでいる今、“暮らしを営む”ということの意味を再考させてくれる一冊だ。

新潮社 週刊新潮
2023年2月9日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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