「はっぴいえんど」ラスト・コンサートを見た2人の著者による熱すぎる研究書

インタビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

「はっぴいえんど」ラスト・コンサートを見た2人の著者による熱すぎる研究書

[文] Book Bang編集部

「はっぴいえんど」ラスト・コンサートを見た2人の著者による熱すぎる研究書


はっぴいえんど「風街ろまん」のレコードジャケット

 細野晴臣、大滝詠一、松本隆、鈴木茂の4人からなるバンド、「はっぴいえんど」については、「日本語ロックの始祖」とされることが多い。また最近では「シティ・ポップの源流」といった評価も目にする。

 代表曲の一つ、「風をあつめて」はよくカバーされて、CMに使われたりもしたので耳にしたことがある方も多いだろう。

 よく知らないという若い方は、試しに身近にいる年配の音楽好きに「はっぴいえんどってそんなに凄いのですか」と聞いてみるといいかもしれない。

 かなりの確率で熱い答が返ってくるのではないか。

「細野さんはその後YMOを作ったんだよ」

「大滝さんの曲は聴いたことがあるでしょう。『君は天然色』とか、ほら、最近でも『幸せな結末』とかさ」

「松本さんの歌詞、松田聖子とかKinkiKidsとか絶対に何曲か知っているはず」

「鈴木さんはソロアルバムもいいんだけど、ユーミンとかと山ほど共演していて……」

 止まらぬウンチクやコメントに少し疲れてしまうかもしれない。

 もちろん解散後のソロ活動ではなく、はっぴいえんどの音楽そのものに影響を受けたとされるミュージシャンは数多い――というよりも、現在の日本のロック、ポップス界で、まったく影響下にないアーティストを探すほうが難しいだろう。直接の影響を口にしているかどうかはともかく、どこかで彼らとつながっている、といっても過言ではない。

 一方で、 こうした伝説的なバンド、アーティストは往々にして、当時の評価とのちの評価がすり替わったり、混同されたりしがちだ。当然のことながら、最初から伝説的な存在であるはずがない。

 はっぴいえんどは活動時、どのような存在であったのか。どういう受け止め方をされていたのか。どういう素地があって生まれ、何を変えたのか。

 当時の空気を知るのに格好の1冊が『はっぴいえんどの原像』(サエキけんぞう・篠原章著、リットーミュージック)である。

 アーティスト・作詞家のサエキ氏と評論家の篠原氏はともに10代の頃にはっぴいえんどに熱狂し、ライブを見に行った経験を持つ。リアルタイムで体験した世代でしか伝えられないことがあるようだ。

 本書の刊行を機に、当時のことや、なぜいま、はっぴいえんどなのか等々聞いてみた。

 ***

――そもそもはっぴいえんどについては、過去にもそれなりに研究書や関連書はあった。なぜいま、こういう本を書こうと思ったのか。

篠原:サエキけんぞうとぼくは実は従兄弟(いとこ)同士で、10代の頃からお互いのはっぴいえんど観や、はっぴいえんどに関する情報を確認し合ってきましたが、50年余りに上るお互いのやり取りをそろそろまとめておきたいということで、10年ほど前から少しずつ準備してきました。

 その結果出来上がった本書は、日本のロック史、ポップス史、ポップカルチャー史を考える際に、これまで欠けていた視点を供するものになると自負しています。

 たしかに、すでに『定本はっぴいえんど』のほか定評ある研究書や資料的文献が出版されています。

 しかし、純粋なファンとしての視点を残しておきたいという意図と、重要な事実や経験であるにもかかわらず、これまでほとんど触れられてこなかった事柄を残しておきたいという意図がありました。

Book Bang編集部
2023年2月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク