仕事でネガティブ沼にハマりがちな人の考え方と不安への対処法

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仕事でネガティブ沼にハマりがちな人の考え方と不安への対処法

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

人は誰しも、なにかの不安を抱えているもの。ある意味で、不安を感じることは人間にとって当たり前の現象だとすらいえるかもしれません。

しかし『不安専門カウンセラーが教える 晴れないココロが軽くなる本』(柳川由美子 著、フォレスト出版)の著者は、現代社会において不安のなかに生きている人たちはだいぶ事情が違っていると指摘してもいます。

太古の時代であれば、生命をおびやかすような出来事に対して不安を感じることは当たり前のことでしたが、いまは人間関係における不安がとにかく多く、仕事の不安、子どもの将来への不安、老いや健康への不安など、不安の要素はさまざまです。

これは当然、社会の複雑化や人間関係における役割の多様化など原因もさまざまですが、不安を感じやすい人は、こういった社会に真摯に生きようとする人たちです。(「はじめに」より)

いいかえれば、「真面目で繊細でがんばり屋」ほど、不安に感じるタイプであることが多いわけです。そこで本書は、そんなタイプの人の心が少しでも軽くなるようにとの思いから書かれたのだといいます。

著者は、不安になる科学的根拠と仕組みに基づく実践型カウンセリングに定評があるという「不安専門カウンセラー」。自身も幼少時から不安に悩まされてきたものの、心理学を学んでいく過程で形づくられた性格や思い込みによる不安の正体がわかり、癒やされることによって不安を解消することができたのだそう。

つまり本書のバックグラウンドには、そうした自身の経験があるわけです。さらには、8000回以上の個人セッション経験を通じて確立した独自メソッドも活かされているのだとか。きょうは第3章「カウンセリングルームへようこそ。さまざまな不安を軽くする方法」のなかから、仕事に関する不安への対処法に焦点を当ててみたいと思います。

仕事をうまくやっていけるだろうかという不安

仕事に不安はつきものですが、真面目で責任感が強い人ほど、仕事が思うようにいかなかったりすると不安を増大させてしまいがち。

そればかりか性格がやさしく、他人に尽くすため、“できないこと”に意識が向いて自分自身を責めてしまう傾向にもあるようです。

しかもそうした不安から、どんどん“ネガティブの沼”にはまってしまうというケースも少なくないでしょう。たとえば、以下のようなループで不安を大きくしてしまうわけです。

導入された新しいシステムを使って組織(チーム)に貢献できる人間になろう=責任感

そのためには、このシステムを使いこなすだけではなく応用できるようになろう=完璧主義

わからないところもあるが、部下に聞いたら迷惑をかける=他人に優しすぎる、気を遣う

わからないところは自分で調べて何とか解決しよう=真面目

どうして自分はうまくできない、使いこなせないんだ=自分を責める

ネガティブな感情で不安だけが大きくなっていく

この繰り返しで、ついにはネガティブ沼へ

(61〜62ページより)

このように、不安な人は自分ができていないところばかりに意識が向いてしまうのです。なお注目すべきは、「そういった人たちは、いままでできたこともたくさんあるのに、それを忘れてしまっているケースが多い」という著者の指摘です。

そこでカウンセリングにおいては、「高校の部活時代に活躍したエピソード」など、過去に自分が乗り越えてきたことや力を発揮した場面を思い出してもらうのだそうです。すると、自分のなかにある肯定的な力を感じ、ネガティブな感情から抜け出せる人が多いというのです。

それはつまり、「リフレーミング(視点や見方を変える)」していくと、「自分も意外と逆境に強いんだな」と気づけるということ。それまでは不安というフィルターでしか自分を見ていなかったわけですが、そこで「できる」ということに気づければいいのです。

重要なのは、不安に感じていることに対して「なにが問題か?」を具体的に書き出すこと。それらの問題に対する対処法をリスト化し可視化するだけで、安心できる場合が多いということです。そこで不安を感じている方には、「1日1回、気持ちのよい時間をつくる」というワークを具体的に試してほしいのだと著者は述べています。

やり方は簡単です。自分をポジティブにしてくれるものを事前に10〜30個くらい書き出しておいて、その中から今日1日でやることを決めます。時間は20分間くらいで気分がよくなることで、これを毎日、できれば同じ時間帯に1週間くらい続けます。(64ページより)

するとやがて、なにもしなくても同じ時間にポジティブになることができるのだそう。気持ちのいい時間が潜在意識にインプットされ、デトックス効果が得られるということのようです。(58ページより)

ネガティブ感情をポジティブ感情に切り替える方法

当然のことながら、ネガティブ感情になりやすい人にとっては早めに対処することがなによりも大切。

ネガティブ感情が繰り返されやすい一方、ポジティブ感情はシャボン玉のように消えやすいものです。そのため、なるべくネガティブな感情をなくすための「感情の切り替え方法」を行うべきなのです。具体的には、「運動、音楽、フローな状態、書くという方法、呼吸法や瞑想」の5つ。そのなかから、「運動」と「フローな状態」を確認してみましょう。

たとえば運動をすると脳内ホルモンのベータエンドルフィンが分泌され、一種の幸福感を味わえるもの。著者によれば、週に3回程度30分の有酸素運動(少し呼吸が上がる状態)をしてもらい、「運動をして薬も服用している人」「運動だけをしている人」「薬だけ服用している人」の効果測定をした結果、いちばん効果が高かったのは「運動だけをしている人」だったという臨床データもあるのだそうです。

もうひとつ、「フローな状態」とは、とにかく時間も忘れて没頭できるものに取り組んでみること。といっても難しいことをする必要はなく、カフェの窓から歩く人たちの姿をただボーッと観察するとか、食器洗いをしながら流れていく水を見るとか、なんでもOK。そういった時間が大切だということを知っておくこと、それ自体に意味があるわけです。(64ページより)

当然のことながら、本書を読めばすべての不安が解消できるというわけではないかもしれません。しかし重要なのは、不安になったとき“心を軽くする方法”を使って心のバランスを保っていくこと。そういう意味で、本書はきっと役になってくれることでしょう。

Source: フォレスト出版

メディアジーン lifehacker
2023年2月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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