『戦略としての家庭マネジメント : 仕事のパフォーマンスを最大化する』
- 著者
- 藏本, 雄一, 1982-
- 出版社
- ぱる出版
- ISBN
- 9784827213751
- 価格
- 1,540円(税込)
書籍情報:openBD
仕事で必要なスキルは、なぜ「家庭運営」ですべて身につくのか?
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
「お金がかかりそう」「自分の時間を持てなくなりそう」「責任が重すぎる」というような理由から、結婚、そしてその後の生活を前向きに考えられないという方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、“ベストパートナー引き寄せコーチ ”として婚活コーチングを行なっているという『仕事のパフォーマンスを最大化する 戦略としての家庭マネジメント』(藏本雄一 著、ぱる出版)の著者は、決してそうではないと主張しています。
まずお金については、子どもが小学校を卒業するまでの12年間のあいだにつくれればなんとかなるもの。その方法も、起業や副業、転職などさまざま。時間については、家族と過ごすことでパワーチャージが可能になるでしょう。家族の笑顔がモチベーションを高めてくれるわけです。
逆に、家族のいない状態でひとりでやろうとすると、たとえば親の介護などは精神的につらいものになってしまうはず(著者自身、自分の家族との時間がなければ父親の介護を乗り越えられなかっただろうと振り返っています)。
気になるのは「仕事に集中できるのか」ということかもしれませんが、家族がいると、仕事で覚醒する場合があるのだとか。
なぜなら、大切なのは「心理的安全性」。
安心できる場所があってこそ、挑戦する勇気が生まれるのです。(5ページより)
だからこそ、仕事と家庭は切っても切り離せない関係にあるというのです。そして、そんな考え方に基づいて、本書では「仕事で成果を出すために家庭を円満にするコツ」を明かしているわけです。
戦略3「家族を運営してチーム運営術を身につける」に焦点を当ててみましょう。
家族運営で仕事に必要なことがすべて身につく
もし会社と同じマネジメントを家庭に持ち込んだとしたら、パートナーか子どものメンタルに悪影響が及ぶことになるかもしれません。
数字か規則が最優先になり感情面が置き去りになってしまいますし、「成果を出していないと居場所がなくなる」方式は家庭に向かないからです。だから多くの人は、会社と家庭とをうまく切り替えているわけです。
しかしそれでも、仕事で必要なスキルは、家庭ですべて身につくのだと著者は主張しています。ビジネスマンが価値を発揮する形態は、次の2パターンなのだと。
本質を突き詰めていくと、このどちらかの人間になれれば、組織のなかで自然と活躍できるフィールドが生まれてくるというのです。
① 新しい価値を生み出し、独立起業する
② 会社などの組織で、出世していくか、専門分野を極める
(85ページより)
まず①は、新たな価値を創造して事業化できる人材(0から1をつくり出せる人)だということ。新しい枠組みをつくることに長けており、既存の枠組みのなかから不完全な点を見つけ、価値をつくり出していくわけです。
対する②は、既存事業の売上・利益を最大化できる人材(1のものを10や100にできる人)。ある程度の枠組みがあるなかで、実力を発揮することができるということです。
いうまでもなく、0から1をつくり出せる①も、1のものを10や100にできる②も、絶対にまわりが放っておかない人材です。仮に、いま勤めている会社が倒産したとしても、①の人は副業や起業で力を発揮することでしょう。一方の②は、他の組織で働いても能力を発揮できるはず。
そして、これをもっとも身近に体験できるのが家族関係なのだと著者はいうのです。
当然ながら結婚すれば、1人の人間と1人の人間が一緒になります。普通に考えれば1+1=2になりますが、相乗効果の生まれない関係性は1+1=2未満になってしまう可能性もあります。お互いに信頼できず、家のなかでも安心できずにギスギスしてしまうわけです。
タスク面でも、たとえばどちらも家事をしなかったとしたら、余計なストレスが発生することになるでしょう。
逆に、相乗効果の生まれる家族では、1+1=2より大きくなります。パートナーがいるお陰で、安心もできるし、仕事に精を出す理由ができます。
家事などのタスクの役割分担も明確で、余計なストレスが減ります。また、金銭面でも協力することで、一人暮らしよりも豊かな生活が可能になります。(86ページより)
そして家庭がうまく機能している場合、仕事においても組織がうまく機能する可能性が非常に高いのだそう。
女性が多く働いている職場の場合、パートナーとの関係がよい男性は、働く女性の気持ちに共感できることが多いから。
また男性が上司の立場である場合、家庭円満だとそれだけで女性の方々からの評判が上がるということのようです。(84ページより)
「家族をマネジメントすること」がなぜ大事なのか
著者は本書で、家族をうまくマネジメントすることの重要性を説いています。理由は、次の3つに関わることができるからなのだそう。
・ビジョン作成
・大事な価値観の共有
・目的や存在意義の確認(92ページより)
会社だとしたら多くの場合、これらに関わることができるのは経営者か役員クラスということになります。しかし家族であれば、パートナーとふたりで自由に決めることができるわけです。
しかも家族である以上、指示命令のようなものがなくても自発的に動くことができるはず。本人が自分の意思で取り組めば、当然ながらパフォーマンスも向上することでしょう。
パートナーにも自分にも、得意な部分・不得意な部分はありますが、できることならこれらを全て書き出すことができるといいと思います。(93〜94ページより)
もちろん、最初から完全なものを作成しなくてもOK。まずは30%の出来でかまわないので作成してみて、そこから夫婦で話し合って調整していけばいいのです。(92ページより)
たしかにこのような意識を持っていれば、結果的には家庭がビジネスパーソンのポテンシャルを向上させてくれるのではないでしょうか。
Source: ぱる出版