認知バイアス「アンカリング効果」を知れば、適正価格を認知しやすくなり無駄遣いは避けられる?

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情報を正しく選択するための認知バイアス事典 行動経済学・統計学・情報学  編

『情報を正しく選択するための認知バイアス事典 行動経済学・統計学・情報学 編』

著者
情報文化研究所 [著]/高橋 昌一郎 [監修]
出版社
フォレスト出版
ジャンル
哲学・宗教・心理学/心理(学)
ISBN
9784866802107
発売日
2022/12/16
価格
1,980円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

認知バイアス「アンカリング効果」を知れば、適正価格を認知しやすくなり無駄遣いは避けられる?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

情報を正しく選択するための認知バイアス事典 行動経済学・統計学・情報学 編』(情報文化研究所(米田紘康、竹村祐亮、石井慶子)著、高橋昌一郎 監修、フォレスト出版)は、2021年に発売されベストセラーとなった『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』の続編。

前著では「論理学」「認知科学」「社会心理学」という3つの学問分野から「認知バイアス」にアプローチしていましたが、本書では「行動経済学」「統計学」「情報学」という3つの学問分野からアプローチが試みられています。つまり続編であるとはいえ、項目群は完全に独立しているわけです。

すでに前掲書でも述べたが、一般に「バイアス(bias)」とは、織り目に対して斜めに切った布の切れ端のことで、そこから「かさ上げ・偏り・歪み」を指すようになった言葉である。よく耳にする「バイアスが掛かっている」という言い方は、「偏った見方をしている」ときに使う。

「認知バイアス(cognitive bias)とは、偏見や先入観、固執断定や歪んだデータ、一方的な思い込みや誤解などを幅広く指す言葉として使用されるようになったわけである。(「監修者まえがきーー『認知バイアス』を理解して『騙し』に打ち勝つ!」より)

「認知バイアス」に分類される用語は数百以上存在するものの、意味や用法が曖昧だったり、重複した意味ないようだったりするものも多いのだとか。そこで本書の監修者と執筆者は、何度もミーティングを重ね、3つの専門分野で必要不可欠な20項目を厳選し、合計60項目にまとめたのだそうです。

特徴は、事典のようにABC順に項目を並べるのではなく、わかりやすい項目から徐々に理解を深められるように各章が構成されている点。そのため読者は、無理なく楽しみながら読み進めることができるわけです。

きょうは第I部「認知バイアスへの行動経済学的アプローチ」のなかから「アンカリング(Anchoring)」に焦点を当ててみましょう。ある答えに誘導してしまう、なんらかのきっかけによって生まれた情報のこと。

思考を一点に釘づけにする錨(アンカー)とは

数学の授業や雑学の本などで、以下のような問題を目にしたことがあるのではないでしょうか?

0.1mmの紙を100回折り曲げると、どれくらいの厚さになるか?(14ページより)

イメージしづらい数字ですが、これは0が23個続く距離だそう。ちなみに1億kmで0が8個で、地球から太陽までの距離は約1.5億km。

これほどの厚さを想像できただろうか? 0.1mmという薄さに意識が引っ張られて、100回折り曲げてもせいぜい数十cmだろうと考えた人もいるはずだ。このように本質的ではない、もしくは無意味な情報が判断を左右する効果をアンカリングという。(14〜15ページより)

船の錨(アンカー)のように、思考を一点に釘づけしているようなイメージだというわけです。(14ページより)

質問の順番で答えが変わってしまう!

アンカリングを理解するために、ここではひとつの実験が紹介されています。

参加者を2つのグループに分け、次の2つの問題を瞬時に計算させたというのです。

① 1×2×3×4×5×6×7×8=

② 8×7×6×5×4×3×2×1=

(15ページより)

この2つの式は数字の並びが違うだけで、答えは同じになります。計算すれば、どちらも同じ「40320」になるわけです。

ところが実験に参加した人たちが解答した値の平均は①が「512」、②が「2250」だったそう。これは、最初に見た数値が大きいと、大きな数のかけ算をしているために感じるからだと考えられるようです。

では、参加者に以下のような質問をした場合はどうでしょうか?

Q1 あなたは幸せですか?

Q2 最近、あなたはどれくらいデートをしましたか?

(15ページより)

結論からいえばQ1とQ2の相関は低く(相関係数0.11)、Q1の幸福度が高いからといって、デートの回数が多いという関係は見られなかったといいます。ところが質問の順番を逆にすると、相関関係は高くなったというのです(相関係数0.62)。

本来、幸せであるかどうかはデートの有無だけでは決まらないはず。しかし、直近のデートの頻度が回答に影響を与えているわけです。これは、デートの有無を思い出し、幸福度を評価したいからだと解釈できると著者はいいます。(15ページより)

アンカリング効果がうまく使われるのは?

こうしたアンカリング効果が発生する要因はなんなのでしょうか?

1つは答えを導くにあたって調整が不十分だったということだ。かけ算の例がこれに該当する。私たちは自信を持って答えることができないとき、最初に提示されたそれらしい情報や数値を起点(取っ掛かり)として答えを見いだそうとする。そしてその起点こそがアンカーとなる

もう1つはデートの質問のように、暗示的側面によってアンカーに何らかの意味を持たせようとすることだ。そのきっかけになるものをプライミング(先行刺激)という。(16ページより)

ちなみに店頭や広告に記された「本日限り」「希望小売価格」「概算見積」なども、アンカリング効果を生み出す要素。販売側は、お買い得感が際立つように工夫を凝らしているわけです。したがって買い物に失敗しないためには、それらのアンカーが妥当ではない理由を自分で考えることが大切なのです。(16ページより)

本書は、読者が無駄遣いを繰り返さず、ウソの統計に騙されず、情報を盲信しないために役立つはずだと監修者は記しています。「認知バイアス」をきちんと理解し、よりよい人生を歩むため、参考にしてみてはいかがでしょうか。

Source: フォレスト出版

メディアジーン lifehacker
2023年2月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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