『人類の物語』ユヴァル・ノア・ハラリ著（河出書房新社）

　真夜中にふと目を覚まし、物音におびえるのはなぜか。『サピエンス全史』が世界中で読まれた歴史学者は、狩猟で暮らした我らが先祖が、ライオンなどに襲われた記憶が今に受け継がれているからと考える。

　そんなひとり一人では弱く、牙も翼もヒレもない人類が地球の支配者になったのは、どうしてなのか。

　絵をふんだんに使い、文章は総ルビ、小学生でも読める本書は、道具を作り、火を操り、長い時間をかけてパワーを増した人類の歩みを、先祖の体感、未知へのおびえと挑戦心を想像しながら描き、太古の地球を旅する臨場感がある。

　神話など物語をつくり、信じることで、どんな生物にもできなかった多彩な共同作業が可能となり、支配者になったとする仮説が持ち味。５万年前のオーストラリア上陸を、月面着陸よりも重要な人類史上の快挙とするなどスケールの大きさも魅力である。

　大型動物を絶滅させ、自然を破壊する暴君となった負の側面にも目を配るが、世界を変える新しい物語をつくるヒトへの信頼は失わない。未来に開かれた史書だ。西田美緒子訳。

• 河出書房新社
• ユヴァル・ノア・ハラリ
• 西田美緒子
• 鵜飼哲夫
• 人類の物語 Unstoppable Us ヒトはこうして地球の支配者になった
• リカル・ザプラナ・ルイズ

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