なぜ苦くなる?自宅でおいしい英国式紅茶の淹れ方

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ビジネスエリートが知っている 教養としての紅茶

『ビジネスエリートが知っている 教養としての紅茶』

著者
花井草苗 [著]
出版社
あさ出版
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784866674315
発売日
2023/02/07
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

なぜ苦くなる?自宅でおいしい英国式紅茶の淹れ方

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

ビジネスエリートが知っている 教養としての紅茶』(花井草苗 著、あさ出版)の著者によれば、紅茶は世界で水の次にもっともよく飲まれている飲料。その理由のひとつには、原材料である茶葉がもたらす効能が挙げられるのだそうです。

また同時に紅茶は、社交に欠かせないものでもあります。イギリスにおいて大切な人と「ティータイムをともにする」という社交文化が古くから引き継がれているところからもわかるとおり、流行やブームなどの枠を超え、時代の流れに左右されることなく、しっかりと根づいているわけです。

イギリスでは日常はもちろん、ビジネスシーンでもティータイムは重要視されています。

近年グローバル化がますます進み、世界の色々な国の企業の方々とビジネスをする機会も増えてきました。ビジネスシーンにティータイムを取り入れることで仕事の円滑化を図ったり、異なる文化や背景を持つ人々がお互いを理解するのに役立っています。(「はじめに」より)

そこで著者は本書において、紅茶についての知識を持たない方でもビジネスシーンで紅茶を自然に楽しめるように、基礎知識を幅広く、そしてポイントを簡潔に解説しているわけです。

また、本場の紅茶文化を身近に感じていただけるように、在英18年の筆者が実生活で体験したエピソードもあわせてご紹介しております。イギリスの日常生活や社交行事などに関する豆知識を備えておかれますと、ビジネスの場におけるティータイムをスマートに盛り上げる気の利いた会話をご提供できるようになるでしょう。(「はじめに」より)

こうした考え方に基づいて書かれた本書のなかから、CHAPTER 5「ビジネスシーンでも役立つ紅茶の淹れ方とアレンジ」のなかから、「英国式紅茶の淹れ方」に注目してみましょう。

ベストな紅茶の淹れ方について、イギリスでは昔から論争があるそう。さまざまな考え方があるということですが、ここでは一般的に合意が得られているルールを軸としてポイントがまとめられています。

保存状態のよい茶葉を使用する

いうまでもなく、紅茶の魅力は繊細な香りや風味。よって、そうした紅茶本来のおいしさを楽しむには、鮮度のよい茶葉を使用することが大切だということです。

一度開封した紅茶は、空気に触れるたびに酸化が進み、香味が劣化するので注意が必要。通常、紅茶の賞味期限は製造時点より2年から3年だそうです(ただし、未開封であることが前提)。開封後は3か月以内がベストな状態なので、短期間で飲み切れる分を少量ずつ購入し、期限内にいただくのがよいようです。

開封後は品質維持が重要なので、しっかりと密封でき、光を通さない缶やフォイルバッグなどに保存するべき。ガラスの容器や紙袋、密封されていない木箱、蓋の閉まりが悪い容器などは適さないわけです。

また紅茶の茶葉は吸水性・吸湿性が高いため、湿気の高い場所に置くと水分を吸って品質が落ちることになってしまいます。したがって、直射日光の当たらない場所で常温保存し、光や湿気、他のものの香りを避け、床から離れた涼しく乾燥した場所に保管することが大切。

また、オーソドックスな茶葉と、アールグレイなど香りの強いフレーバードティーは離しておき、ハーブやスパイスを近くに置かないこともポイント。(220ページより)

新鮮な水を使う

意外な気もしますが、紅茶を淹れるのにもっとも適した水は、蛇口から汲んだばかりの水道水なのだそう。蛇口から汲みたての水には酸素がたくさん含まれているため、抽出中に紅茶本来のおいしさを引き出してくれるというのです。

とはいえ水道水には不純物も含まれるので、フィルターを通してそれらを除去しておくことはもちろん重要。ちなみに著者の住むロンドンの水道水は硬水なので、しっかり濾過せずに紅茶を淹れると水に含まれるカルシウムと紅茶に含まれるポリフェノールが反応し、表面に薄い膜のようなものができてしまうのだとか。(221ページより)

ティーポットを湯通しして温める

紅茶の成分をしっかり抽出させるためには、沸騰直前の熱湯を使用することが大切。ただし、せっかく熱湯を注いでも、使用するティーポットが冷えていればティーポット内のお湯の温度が下がってしまいます。そこで、抽出が完了するまでお湯の温度を保つために、ティーポットに熱湯を入れてしばらく置いておくとよいようです。(222ページより)

茶葉とお湯の量を計る

使用する茶葉の分量が適切でないと、紅茶が薄すぎたり濃すぎたりしてしまうもの。もちろん茶葉の種類によっても違うものの、一般的にはお湯180ccから200ccにつき茶葉2.5gから3gを使用するそうです。(222ページより)

お湯の温度を確認し、素早く注ぎ蓋をしてしっかり蒸らす

お湯の温度が低すぎると紅茶の香味が弱くなり、逆に高温すぎると水中の酸素が飛んでカフェインとポリフェノールが多く出すぎるため、紅茶が苦くなってしまうことになります。

そのため、紅茶の豊かな風味を引き出すためにはお湯の温度が重要。沸騰直前の熱湯を注ぎ、しっかり蓋をして蒸らすことが大切なのです。抽出中のお湯の温度を保つために、ティーコージー(ティーポットにかぶせる布製のカバー)を使うのも適切な方法であるようです。(222〜223ページより)

抽出時間を決める

蒸らし時間は、茶葉のサイズや形状などに応じて調整することも重要。また、蒸らしすぎるとカフェインやポリフェノールが多く出すぎ、紅茶が苦くなる原因になるそうです。

抽出時間は、オレンジペコー(OP)サイズなど大きめの茶葉は4分から5分、ブロークンオレンジペコー(BOP)サイズなど小さめの茶葉は2分から3分が目安です。抽出が完了したら、ティーストレーナーを通して茶液を別のティーポットに移し替えます。(223ページより)

このように、紅茶はなかなか繊細なものであるようです。しかし、だからこそ人を引きつけてやまないのでしょう。事実、よりていねいに淹れることで、誰でも紅茶本来のおいしさを楽しめるはずだと著者は述べています。(223ページより)

こうした紅茶についての基礎から、ティータイムが組み込まれたイギリスの「社交行事」についての知識までが幅広く盛り込まれた一冊。そのため読み物として楽しめるだけでなく、海外出張や赴任の際にも大きく役立ってくれそうです。

Source: あさ出版

メディアジーン lifehacker
2023年2月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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