『戦国日本の生態系 庶民の生存戦略を復元する』
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『戦国日本の生態系』高木久史著
[レビュアー] 産経新聞社
戦国日本の庶民が、英雄物語の中で抑圧された存在として描かれがちなのは、階級闘争という対立構造で解釈した20世紀の研究の影響か。寒冷化と戦乱の時代に、庶民はどんな生存戦略をとったのか。
日本中世・近世史を専門とする著者は、庶民の生業に関係する記録が多く残る越前海岸(福井)周辺を定点観測地点に設定。地形や植生などに応じ、庶民が窯業、製塩、陸・水運といった生業を複合的に営み、技術革新に努めていた実態を解き明かす。権力との相互依存的な関係もうかがえる。すり鉢や塩、魚などの広域流通の詳細から庶民の暮らしを生き生きと再現。(講談社選書メチエ・2200円)