『歴メシ!決定版 歴史料理をおいしく食べる』遠藤雅司著(晶文社)/『バウムクーヘンの文化史 パン・料理・菓子、越境する銘菓』三浦裕子著(青弓社)
レビュー
『歴メシ! = A collection of historical cuisine recipe from around the world : 歴史料理をおいしく食べる』
- 著者
- 遠藤, 雅司, 1980-
- 出版社
- 晶文社
- ISBN
- 9784794973429
- 価格
- 2,200円(税込)
書籍情報:openBD
『バウムクーヘンの文化史』
書籍情報:openBD
『歴メシ!決定版 歴史料理をおいしく食べる』遠藤雅司著(晶文社)/『バウムクーヘンの文化史 パン・料理・菓子、越境する銘菓』三浦裕子著(青弓社)
[レビュアー] 池澤春菜(声優・作家・書評家)
レシピ解読 味わう年輪
旅先で料理の本を買うのが好きだ。英語、スペイン語、フランス語、中国語くらいならなんとか読める。料理に使う材料や道具、動詞は限られているし、レシピはどれも決まったプロトコルがあるから解読しやすいのだ。
各国の料理の本を見ながら、似ている箇所や、思わぬ違いを発見するのも楽しい。料理で世界旅行をしているような気分になれる。
この2冊はそんな料理本の新たな、縦方向の楽しみ方を教えてくれた。
『歴メシ』のキャッチコピーは「食べてタイムトラベル」。資料や文献、時には粘土板からレシピを再現し、今の時代でも作りやすく、食べて美味(おい)しいようにアレンジしている。中にはドライフルーツとニンニクの入ったお焼きのような、味の想像がつかないものも。気になるレシピにチェックを入れていったら、わたしは古代ローマ、カエサルさんと食の好みが合いそう。
本の後ろ半分はそのレシピにまつわるエッセー。文化風習、歴史、レシピ解読の苦労など。もう絶滅してしまったハーブなんかも出てきて、読み物としても面白い。
『バウムクーヘンの文化史』も丁寧な調査が素晴らしい。バウムクーヘンと言えば、薄い層が重なった焼き菓子。日本で大人気のあの菓子が、どこで生まれ、発展し、そして日本に渡ってきた後どう進化したかを、レシピの解読や材料の考察から掘り起こしていく。
バウムクーヘンの起源は古代ギリシャ、オベリアスと呼ばれる棒に巻き付けて焼いたパン(あんまり美味しくなかったらしい)。それから香辛料で色や風味をつけた生地を紐(ひも)状にして棒に巻き付ける菓子となり、板状になり、液体の生地となり、ついに砂糖が加わって今のわたしたちがよく知るバウムクーヘンに近くなる。
実に壮大なバウムクーヘンの歴史。これからバウムクーヘンを食べる時は年輪一層ごとに歴史の重さを噛(か)みしめることになりそうだ。