伝わらない→伝わるに変えたいなら、身につけたい「3つの力」
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『超完璧な伝え方』(黄 皓 著、ダイヤモンド社)とは気になるタイトルですが、著者によればそれは、「コミュニケーションの幅を広げることにより、自分の目的を達成するために相手を動かす技術」なのだとか。そして「超完璧な伝え方」に必要な要素は、たった3つしかないのだそうです。
① コミュニケーションに悩む臆病さ
② 相手のことを考える想像力
③ コミュニケーションで達成したい目的
(「はじめに」より)
この3つさえあれば、どんな人に対しても自分の考えを100%伝えることができるようになり、誰とでもよい関係を築き、人を動かすことが可能になるというのです。
ペラペラと話す喋りのうまさや、豊富な語彙力は全く必要ありません。
一番大切なのは、人と話す時に臆病になれるかどうかです。
その臆病さこそ、あなたの心の奥底にある「人間関係をもっとよくしていきたい」という思いの表れです。(「はじめに」より)
なかなか説得力のある主張ではないでしょうか?
こうした考えに基づく本書の第2章「超完璧に伝える基本『下地づくり』と『3ステップ+α』」のなかから、「完璧なコミュニケーションの基本3ステップ」を確認してみたいと思います。
ステップ1. 思考力
コミュニケーションが苦手な方のなかには、自分で話しながら「いま、なんのために話しているんだっけ?」とか、「この話の目的ってなんだっけ?」と迷ってしまう人もいるもの。
つまり、言語化する前にしっかり思考し、5W1Hを明確化できていないことが多いわけです。
しかし「なにを伝えるのか」の前に必要なのは、「なぜ」「なんのために」伝えるのか、目的を完璧に把握するステップ。著者は「思考力」を、自分の思いを完璧に把握する力だと定義づけていますが、それはこうした考え方に基づくものなのです。
目的を達成するための道のりを思い描き、必要なコミュニケーションの手順を整理して仮説を立てる。これが思考力です。(73ページより)
つまり思考力に必要なのは頭のよさではなく、目的を明確にする力なのでしょう。(73ページより)
ステップ2. 伝達力
伝達力は、思考力で立てた仮説を実際のコミュニケーションによって相手に伝える力。
自分の考えをことばにする力ともいえるそうです。自分のなかでなんとなくことばにするのではなく、「相手に伝えることば」にできるかどうかがポイント。
単語を変えるのはもちろん、相手のテンションや状態を把握したうえで話のスピードや抑揚を変え、声のトーンを調整し、適度なアイコンタクトも行わなければなりません。これが伝達力です。(75ページより)
伝達力を高めると、コミュニケーションで投げられる球種の数(バリエーション)が豊富になり、対応できる幅が広くなるはず。(75ページより)
ステップ3. 理解力
最後の理解力は、相手がいっていることを理解する力。
言葉通りの意味だけではなく、相手が発した言葉の「本当の意味」を理解する能力です。(76ページより)
たとえば独特のいいまわしや、ことばの裏を読むことも理解力。(76ページより)
3ステップで仮説→実行を細かく繰り返す
3ステップを意識するとコミュニケーションはどう変わるのか? そのことを解説するために、著者は「パフォーマンスが落ちている社員と1オン1をするときにどうコミュニケーションを進めるか」を書き出しています。
「きっと相手も僕に呼び出されるってことは何か話があると身構えるはず。相手が硬くならないように、どんな順番で話そうかな。そういえば、アイスブレイクにはこのトークがいいかもしれない」と、ここまで考えるとコミュニケーションは円滑になります。(77〜78ページより)
つまり、これが思考力。次に……
実際のコミュニケーションで「最近どう?」という雑談からはじめて、徐々に「最近、顔が疲れているように見えるんだけど」とか「なんか悩んでることがあるの?」と聞いて仮説を実践していきます。(78ページより)
これが伝達力のステップ。そして……
すると、「はい、実は最近パフォーマンスが上がらないんですよ」と相手が言い出すかもしれません。このとき、相手の言葉から相手が本当に言いたいことを把握するのが理解力です。(77〜78ページより)
このようにステップを踏むことにより、相手も本音で話しやすくなるというわけです。(76ページより)
著者は中国人として生まれながら、中国と日本との間で何度も転校を繰り返してきたという人物。
つまり本書では、実体験を通じて培ってきた“コミュニケーションの基盤となる考え方”、そして実践的なテクニックを明らかにしているわけです。したがって、コミュニケーションスキルを高めたいという方には、きっと役立つのではないかと思います。
Source: ダイヤモンド社