将棋の名人戦が行われている最中に見つかった矢文(やぶみ)。そこに記されていたのは詰め将棋、しかもどうやっても玉が詰まない「不詰めの図式」だった。若き奨励会員・夏尾はその矢文を東京・千駄ケ谷の将棋会館に持ち込んだ後、消息を絶ってしまう。謎を追い始めた将棋ライターの「私」は「棋道会」なる怪しげな団体のゆかりの地である北海道の廃坑などを訪ねることになるが…。
謎が謎を呼ぶスリリングな展開がさえる長編ミステリー。夢幻と現実が絡み合う自由な語り口で、棋士たちの人生をのみこんでいく将棋の魔力を浮かび上がらせている。(新潮文庫・880円)

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2023年3月19日 掲載
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