<書評>『アメリカの人種主義 カテゴリー/アイデンティティの形成と転換』竹沢泰子 著

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アメリカの人種主義

『アメリカの人種主義』

著者
竹沢 泰子 [著]
出版社
名古屋大学出版会
ジャンル
歴史・地理/外国歴史
ISBN
9784815811181
発売日
2023/03/14
価格
4,950円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

<書評>『アメリカの人種主義 カテゴリー/アイデンティティの形成と転換』竹沢泰子 著

[レビュアー] 矢部武(ジャーナリスト)

◆差別の起源と拡大考察

 白人警官の膝で首を圧迫され死亡した黒人男性ジョージ・フロイドの事件やコロナ禍でのアジア系住民を標的にした憎悪犯罪の急増などに象徴されるように、米国では人種に基づく差別が社会を分断する重大な問題となっている。

 本書では、黒人やアジア系移民などに対する差別を構造的に生み出し続けたステレオタイプや制度、学知などがどう形成されてきたかを膨大な資料の分析、関係者インタビューなどを通して解明し、同時に排除に抗(あらが)うアイデンティティ形成のジレンマも提示している。

 米国の人種問題に関する本はたくさん出版されているが、これだけ多領域にわたって差別の起源や拡大について考察し、論じたものは珍しい。本書は、約四十年にわたりこの分野の研究を続けてきた著者の集大成とも言えるものだが、人種差別によって生命を脅かされている人々の地位向上や権利拡大を願う熱い気持ちが伝わってきて勇気づけられる。

 「日本に差別はない」と思っている人たちにも読んでほしい一冊である。

(名古屋大学出版会・4950円)

関西外国語大国際文化研究所教授 京都大名誉教授。

◆もう1冊

『アメリカ白人が少数派になる日 「2045年問題」と新たな人種戦争』矢部武著(かもがわ出版)

中日新聞 東京新聞
2023年4月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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