『枕頭の一書』窪島誠一郎著

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『枕頭の一書』窪島誠一郎著

[レビュアー] 産経新聞社

枕頭(ちんとう)の一書とは、死ぬ間際に病臥のかたわらに置いていたり、読みかけていたりした本のこと。本書では、著者と交流があった大岡昇平ら作家・評論家4人に永井荷風と芥川龍之介を加えた6人の枕頭の一書を挙げ、なぜその人はその本を選んだのかを考察する。

著者の実父で作家の水上勉の場合は正岡子規の絵入り日記『仰臥漫録』と太宰治の小説集『晩年』。「『死』への垣根を軽快にひょいと飛びこえるような作品」と見る。自死した芥川の『新約聖書』は、「いかに正しく死んでいくか」の手引書とも。作家たちの生と死が迫ってくる一冊。(アーツアンドクラフツ・2200円)

産経新聞
2023年4月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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