【児童書】『ものがたりが うまれるとき』デボラ・ホプキンソン文、ハドリー・フーパー絵、せなあいこ訳

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ものがたりが うまれるとき

『ものがたりが うまれるとき』

著者
デボラ・ホプキンソン [著]/ハドリー・フーパ― [イラスト]/せな あいこ [訳]
出版社
評論社
ジャンル
文学/外国文学、その他
ISBN
9784566080881
発売日
2023/03/03
価格
1,815円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【児童書】『ものがたりが うまれるとき』デボラ・ホプキンソン文、ハドリー・フーパー絵、せなあいこ訳

[レビュアー] 海老沢類(産経新聞社)

■日々の積み重ね

世の中には面白い本があふれている。愛らしいキャラクターや起伏のあるストーリーにひかれて、私たちは時間を忘れてページをめくる。といっても、その本を書いている作家は楽しみばかりではない。何も打ち込まれていないパソコンの画面を前にして途方にくれたり、思うように書けなくて落ち込んだりもする。

そんな生みの苦しみをつづった絵本だ。自分だけの物語を生み出すために机に向かった「きみ」。ところが紙はいつまでも真っ白で落書きばかりがたまる。そんなとき目にとまったのは窓の外の小鳥。木の枝にやってきては一粒ずつ小さなたねをついばんでいた。

「小鳥は ぜったい あきらめない。なんども なんども やってくる。いちどに たった ひとつぶ そして、また ひとつぶ」。もう一度鉛筆を握った「きみ」の表情が晴れ晴れとしているのが印象深い。

どんな大きな仕事も、一歩一歩、一日一日の積み重ねから始まる。やさしい言葉が、何かを生み出そうとしている人の背中をそっと押す。(評論社・1815円)

海老沢類

産経新聞
2023年4月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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