『MAKINO 植物の肖像』菅原一剛著(北隆館)

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MAKINO: 牧野富太郎「植物標本の美」に迫る菅原一剛写真集

『MAKINO: 牧野富太郎「植物標本の美」に迫る菅原一剛写真集』

著者
菅原一剛 [著]
出版社
北隆館
ISBN
9784832610590
発売日
2023/02/20
価格
6,600円(税込)

『MAKINO 植物の肖像』菅原一剛著(北隆館)

 「日本植物学の父」と呼ばれる植物学者の牧野富太郎(1862~1957年)は、人間は植物に感謝しなければならないと考え続けていた。その感謝は、手がけた標本が、まるで生きているかのようなことからも見て取れる。たとえば、ソメイヨシノ=写真=は、採集の時期にも心を砕いた枝だろう。咲き誇る花もあれば、咲きかけも、つぼみもあり、余白の向こうから、柔らかな春の陽光がさしてきそうだ。牧野はことのほか桜を愛し、ソメイヨシノは「他のサクラの及ばぬ艶麗(えんれい)な姿」と絶賛した。

 本書は、牧野の標本に魅せられた写真家の菅原一剛が、高知県立牧野植物園が所蔵する標本から41点を撮影した。東京・練馬の牧野邸で採集されたセンダイヨシノという種の桜のほか、イロハモミジ、ヒメアジサイ、コスモスなどの標本が、高精細に写されている。いずれも、人物の肖像写真のように、折り目正しいたたずまいだ。(央)

読売新聞
2023年4月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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