『忍者学大全』山田雄司編、三重大学国際忍者研究センター監修(東京大学出版会)

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忍者学大全

『忍者学大全』

著者
山田 雄司 [編集]/三重大学国際忍者研究センター [著]
出版社
東京大学出版会
ジャンル
社会科学/民族・風習
ISBN
9784130533034
発売日
2023/03/01
価格
8,250円(税込)

書籍情報:openBD

『忍者学大全』山田雄司編、三重大学国際忍者研究センター監修(東京大学出版会)

[レビュアー] 金子拓(歴史学者・東京大教授)

 忍者学という言葉を聞いたとき、大変失礼ながら、キワモノめいた印象を持った。しかし今、その成果が詰まったずっしりと重い本書を手にして、第一印象が全くの的外れであることを悟った。

 2017年、三重大学に国際忍者研究センターが設置された。同大の忍者学の取り組みはさらに5年前に遡る。本書はその研究成果の発信の場である市民向け講座をまとめたもので、40編の論文と附録(ふろく)の史料紹介から構成されている。

 内容は多彩で、忍者(忍び)の基本文献である忍術書『万川集海(ばんせんしゅうかい)』などの史料研究や、戦国時代から江戸時代にかけての忍びに関する実証的研究、以前本欄で取りあげた吉丸雄哉『忍者とは何か』のような後世に形成されたイメージ研究はもちろん、忍術を「極限状態における総合生活術」と位置づけ、現代のストレス社会に対処するためのヒントをも提示する。

 忍者の里である伊賀という地域の特性を活(い)かして連携しながら、現代的課題にも果敢に挑む。この試みは、地域に根ざす地方国立大学ならではの研究として注目に値する。

読売新聞
2023年4月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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