『「アメリカ小麦戦略」と日本人の食生活〈新版〉』
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<書評>『「アメリカ小麦戦略」と日本人の食生活[新版]』鈴木猛夫 著
[レビュアー] 藤井耕一郎(ライター)
◆急速な欧米化の背景
米国では昭和二十年代、小麦、トウモロコシ、大豆などの農産物の過剰在庫が国家財政を圧迫していた。そのため、日本が過剰在庫を消費することを望んだ。この時点から、日本人の食生活は世界に例を見ないほど急速に欧米化していく。
米国による農産物の輸出攻勢は「小麦戦略」と呼ばれ、今は小麦の九割以上を米国、カナダ、オーストラリアなどから輸入する。結果として、安価な海外産小麦の大量流入により日本の小麦生産農家は生産意欲を失った。主要先進国の自給率で日本は最下位に落ちるが、農産物の過剰輸入は日本が米国に働きかけを依頼したという見方もされている。
後に米国と学校給食の関係が接近し、小麦の消費は順調に伸び、コメの消費は下降線をたどる。本書で打ち出される主張を一言でまとめると、欧米の食材に基づいて栄養をとらえるのではなく、かつての食生活の伝統を復活させることである。戦後、米国の輸出攻勢で日本の学校給食に投じられた膨大な資金の流れを明らかにすべきではないだろうか。
(藤原書店・2750円)
1943〜2008年。食生活史研究家。和光商会代表を務めた。
◆もう1冊
『世界で最初に飢えるのは日本 食の安全保障をどう守るか』鈴木宣弘著(講談社+α新書)