『親子で楽しむ星空の教科書』渡部潤一/渡部好恵著(講談社)
[レビュアー] 金子拓(歴史学者・東京大准教授)
「星の無い空見上げて あふれそうな星を描く」ことは「愚かだろうか?」とスピッツは問う(「僕はきっと旅に出る」)。昨年の皆既月食では多くの人が天体ショーを楽しみ、先般月と木星と金星が大接近したとき、SNSは大賑(にぎ)わいだった。みんな夜空に対して何かを希求している。だから決して愚かではない。
この機会に、月や星のことを一から学びたい。そういう人にうってつけの本である。「親子で楽しむ」とあるとおり、天文学の泰斗が、宇宙と空の境目はどこ? 月の満ち欠けはなぜ起こる? 星はなぜきらきら輝く? といった初歩の疑問から優しく教えてくれる。
月は一年に3.8センチずつ地球から離れているから、数億年後には皆既日食が見られなくなる。そんな話を知ると、遠くにある星の光が実はずっと昔に放たれたものであることに、悠久の時間と壮大な宇宙を感じ夜眠れなくなった子供の頃を思い出した。