『日の丸コンテナ会社ONEはなぜ成功したのか?』
- 著者
- 幡野, 武彦, 1969- /松田, 琢磨, 1973-
- 出版社
- 日経BPマーケティング (発売)
- ISBN
- 9784296001378
- 価格
- 1,980円(税込)
書籍情報:openBD
『日の丸コンテナ会社ONEはなぜ成功したのか?』幡野武彦/松田琢磨著(日経BP)
[レビュアー] 西成活裕(数理物理学者・東京大教授)
コロナ禍で世界の物流が大混乱したのは記憶に新しい。さぞや物流企業はこの3年間大変だったろうと思うなかで、とんでもなく業績を伸ばした日本企業がある。それがONEだ。これは日本の海運大手3社が、赤字のコンテナ部門を切り出し合併してできた会社である。派手なマゼンタ色のコンテナがその象徴で、一昨年度は何とトヨタに次ぐ2兆円の利益となった。これまで半導体やディスプレイでも企業統合が行われてきたが残念ながら上手(うま)くいっていない。それゆえONEの成功は多くの人にとって大いに参考になるだろう。
その理由はもちろん単純ではないが、特に重要なキーワードが「出島」であるという。本社機能はシンガポールにあるが、その日本から出た場所で伸び伸びと活動ができ、それゆえ迅速な意思決定ができた。また国からの補助金も一切なく、民間資金で合併したことも自由な気風を保てた要因になった。本書ではさらに世界の海運の群雄割拠の歴史や、危機を共に乗り越えた関係者の人間的魅力がたっぷりと堪能できる。企業ものとして出色の出来といえる一冊である。