『羊と日本人』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
『羊と日本人』山本佳典著
[レビュアー] 産経新聞社
前近代の日本人にとって、全くなじみのない家畜だった羊。しかし文明開化に伴う洋装の普及で羊毛需要が急増すると、殖産興業の有力案として耕作不適地を活用した牧羊業が注目されるようになる。初の官営牧場が置かれたのは、現在の成田空港一帯だった。
軍服の主原料である羊毛の自給は国策とされたが、不況や震災など時代の荒波に翻弄され、増産はうまくいかなかった。期待された大陸での大規模牧羊も、敗戦で水泡に帰す。飼育頭数からみた最盛期は戦後復興期だったが、高度成長期を迎えると急速に衰退した。在野研究者が膨大な資料で描く、羊毛の近代史。(彩流社・3850円)