男性に対する生理的嫌悪感は拭えないけれど、子供を産むことは諦められない38歳の平井。3Dプリンターで死んだ犬のフィギュアを作り続ける42歳の菅沼。年齢的にも結婚や出産が意識の底にある独身女性2人による同居生活を、新型コロナウイルス禍の日常を背景に描いている。
恋愛、結婚、出産…。2人の心の中では、世間で言う「普通」に縛られる苦しみと、そこからの解放を求める思いがぶつかり合う。的確な描写を積み重ね、声にはならない内なる叫びを見事にすくい上げている。第46回すばる文学賞に輝いた話題のデビュー小説。(集英社・1595円)
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2023年4月23日 掲載
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