『入門 開発経済学』
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『入門 開発経済学』山形辰史著
[レビュアー] 産経新聞社
内戦や飢饉(ききん)による食糧不足、女性に対する暴力など、途上国にいまだ残る「理不尽な悲惨さ」を改善するための支援のあり方を専門家が提言。拡大する中国の途上国支援に関する現状分析が興味深い。
中国の対外援助の本質が、商業借款に近い融資条件で多額を用立てる点だと明らかにした米大学の研究を紹介。その融資契約の特徴は他の援助機関より多くの機密事項を設定し、透明性が低いこと。債務不履行の状態に陥った場合、中国への債務支払いだけは確保するような条件を設定する傾向もあるという。国家の権益を譲渡して返済に充てる「債務の罠」の背景事情が分かる。(中公新書・990円)