『人類滅亡の科学』
- 著者
- マーシャル・ブレイン [著]/ナショナル ジオグラフィック [編集]/竹花 秀春 [訳]
- 出版社
- 日経ナショナルジオグラフィック社
- ジャンル
- 社会科学/社会科学総記
- ISBN
- 9784863135475
- 発売日
- 2023/02/17
- 価格
- 3,960円(税込)
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『人類滅亡の科学 「滅びのシナリオ」と「回避する方法」 (原題)The Doomsday Book』マーシャル・ブレイン著(日経ナショナルジオグラフィック)
[レビュアー] 佐藤義雄(住友生命保険特別顧問)
核や災害 25の脅威警告
「人類滅亡」や「世界終末」はどういう状況で起きるのだろうか。たびたび映画の題材ともなっている小惑星の衝突や核戦争などが典型的な例だろうが、本書ではそれらを含め現実となりうる25の「滅びのシナリオ」が紹介される。超巨大火山の噴火や大地震などの自然災害はもちろんだが、人類に原因があるシナリオも多い。核弾頭を海岸近くで爆発させれば破壊的大津波で沿岸都市は壊滅する。あるいはアメリカ北部の一つのダムを破壊すれば洪水の連鎖でアメリカが真っ二つになる。そして地球温暖化の暴走、国家やテロリストによる人為的パンデミック、オピオイド鎮痛剤中毒の蔓延(まんえん)など、何らかの形で見聞きしたものからほとんど知られていないものまで、ドラマ的手法も交えながら我々を戦慄(せんりつ)させるストーリーを提示し警告を与える。
一昔前であればこういうシナリオはオオカミ少年の類いだと一笑に付すこともできたかもしれない。しかし誰もが想像しなかった9・11のテロが実際に起こり、最近ではロシア・北朝鮮が核兵器の使用をちらつかせ脅しをかける。地球温暖化の加速による異常気象が頻発し、また各国のパンデミックへの備えと対応は必ずしも十分ではなく多くの犠牲者を出した。人類や生物への脅威が確実に高まる中、本書はそれぞれのシナリオが実際に起こりうる「科学的な根拠」を解説し、同時にそれらを防止する、あるいは被害を最小化し回復力を高めるような「回避する方法」を冷静に分析する。もちろん相当な困難を伴い、また回避できないものもあろうが、シナリオを真剣に想像して研究することで、滅びを未然に防ぐために多くの実行可能な手段を手にすることができると主張する。
著者は難しい事柄をわかりやすく伝えることで有名な解説者。事例はショッキングだが記述は平易で写真や図版も多く中学生でも理解できる内容だ。特に未来を担う若い方々にお薦めしたい一冊である。竹花秀春訳。