「サメ=凶悪モンスター」か? 人を襲うサメとの共存を描くエンタメ傑作!

エッセイ

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

ホワイトデス

『ホワイトデス』

著者
雪富千晶紀 [著]
出版社
光文社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784334915179
発売日
2023/04/19
価格
2,200円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

瀬戸内海にホホジロザメがやって来た

[レビュアー] 雪富千晶紀(作家)

『ホワイトデス』と聞いても、ほとんどの人が一体何のことやらだと思う。映画『ジョーズ』で有名なホホジロザメの別名で、白い死神という意味がある。

 前作『ブルシャーク(オオメジロザメ)』の続編を書かせて頂けることになり、真っ先に今回はホホジロザメを主役にしようと決めた。サメ愛好家にとって、ホホジロザメはやはり特別な存在だ。他のサメとは一線を画す王者の風格がある。

 自分で決めたにもかかわらず、「ついにホホジロザメを書ける日がきた……!」と、私は一人感激に打ち震えた。畏れもあった。ホホジロザメの小説を書くならば、「既存の物語の型」に頼っていてはならない。映画『ジョーズ』とは別のベクトルの、特別なものにしなくてはならない、と。

 私はサメ愛好家であると同時に、なんでもアリのサメ映画ファンでもあり、両者の中間にいるなんとも中途半端な存在だ。そのせいで、自己矛盾とも言える問題がずっと心に燻(くすぶ)っていた。「サメ=凶悪なモンスター」という設定だ。主に映画などではそのように描かれがちで、サメ映画ファンとしての私は、悪役スターのサメを大いに楽しませてもらっている。しかし、サメ愛好家としての自分が顔を出すと、胸にチクッと棘(とげ)が刺さる。存在=悪とされ、最後には当然のように殺されるサメを、不憫(ふびん)に思ってしまうのだ。

 という訳で、今作ではその問題に真正面から取り組むことにした。テーマは「サメと人間、社会との関わり」だ。仰々しくなってしまったが、瀬戸内海に入り込んだサメが出て行かない原因を探るという、サメエンターテインメント小説だ。

 最初から答えは出ている。人を襲う可能性のある種類のサメと人間は「共生できない」。だが、予期せぬ事情で両者が共存せざるを得なくなったとき、人間はどうなるのか。社会はどうなるのか。サメはどうなるのか―。

 どんな結末を迎えるのか、見届けて頂ければ幸いだ。

光文社 小説宝石
2023年5・6月合併号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク