『抱擁家族』などの小説で知られる小島信夫には没後も熱心な読者がついている。そんな作家が持ち前の融通無碍な語り口で創作の本質に迫っている。単行本未収録の講演や対談も加えた文庫オリジナル編集の一冊。
書き続けるために必要なこと。小説における「新しさ」。作家と読者がつながる「共通の場」…。話は単なる技術論を超え、世界の捉え方へと広がっていく。さまざまな問題を抱えた世の中を見据え、「どんなことが起こっても耐えうるようなことが書いてある」とカフカの小説を評する講演「カフカをめぐって」は、とくに示唆に富む。(中公文庫・1320円)
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2023年4月30日 掲載
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