<書評>『49冊のアンアン』椎根和(やまと) 著
[レビュアー] 永江朗(書評家)
◆天才が率いた創刊時の熱狂
女性ファッション誌『アンアン』が平凡出版(のちのマガジンハウス)から創刊されたのは一九七〇年三月だった。雑誌づくりの中心はアートディレクターの堀内誠一(三二〜八七年)。堀内は平凡出版の社員ではないにもかかわらず、編集長より強い権限を持っていた。
本書は同誌編集部員だった著者による、創刊号から創刊二周年記念号まで全四十九冊についての回顧と解説。なぜ四十九冊なのかというと、この後堀内は同誌を去り、著者も退社したからだ(その後『オリーブ』創刊編集長として再入社)。
堀内は十四歳で伊勢丹の宣伝課に入社して広告やデザインに力を振るったという早熟の天才。抜群のセンスで写真を選び、レイアウトを考え、ときには文字やイラストも描いた。堀内という磁石に引き寄せられるようにして、写真家の篠山紀信や立木義浩、ファッションデザイナーの金子功や三宅一生、川久保玲、グラフィックデザイナーの横尾忠則ら若い才能が集まってきた。本書の行間から当時の熱狂が伝わり、興奮してくる。
(フリースタイル・2200円)
1942年生まれ。雑誌編集者。『popeye物語』など。
◆もう1冊
『音楽の肖像』堀内誠一・画と文、谷川俊太郎・詩(小学館)。作曲家の肖像画とエッセーと詩。