『ここに素敵なものがある』リチャード・ブローティガン著、中上哲夫訳

小説『アメリカの鱒釣り』の成功で、ヒッピー文化のヒーローとなった米作家、リチャード・ブローティガン（１９３５～８４年）。村上春樹の初期作品にも影響を与えたといわれる作家の詩集を、約３０年ぶりに新訳し復刻した一冊。

俳句に親しんだ作家の詩はどれも短く、想像の余地が大きい。極小の言葉に、深い孤独と喪失感、かすかな希望がにじむ。表題作では「きみがほしがるようなものはぼくには／ほとんど残っていない」とつづり、「それはきみの掌（て）のなかで初めて色づく」と続ける。やさしく控えめな声で、社会の片隅にいる人々の心に寄り添う。（百万年書房・２２００円）

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