人生の岐路に東京を選んで住み始めた-と編者が定義する「上京者」たちが著した11作品を収録している。舞台はいずれも東京。
大正期、上野の博覧会見物に来た家族の目で東京を活写する生方敏郎著「東京初上り<抄>」。昭和中期、上京して歌手になった女性の混沌の日々を描く浅川マキ著「プロデューサー」。昭和後期、地方の若者の東京観を映し出す重松清著「東京に門前払いをくらった彼女のために」…。他に林芙美子、富岡多惠子、丸谷才一ら多彩な物語が並ぶ。上京が昔ほど難しくなくなった現代の若者がどう読むかが気になる。(岡崎武志編、中公文庫・1100円)
-
2023年5月7日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです