『全国駄菓子屋探訪』土橋真監修(トゥーヴァージンズ)

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『全国駄菓子屋探訪』土橋真監修(トゥーヴァージンズ)

 駄菓子屋文化研究家を名乗る著者が、北は北海道から南は沖縄までの駄菓子屋を取材、さらには駄菓子メーカーや卸問屋にもインタビューをしてまとめた一冊だ。

 背景にあるのは自身の体験だ。東京の下町育ち。小学生の頃は、小遣いを握っては近所の駄菓子屋、通称「ババヤ」に通い、店のおばちゃんから「生きていく上で大切なこと」を教わった。ところが高校時代に通りかかると、店のあった場所は更地に。客単価は低く、もうけはほんのわずか。遊びの多様化や少子化に店主の高齢化も重なり、駄菓子屋文化はもう終わりか……。

 だが、著者はそういった安易な滅亡論に賛成しない。老舗だけでなく、子どもも大人も楽しめ、地域も活性化している“新しい”駄菓子屋を紹介。苦境にあっても駄菓子屋は「強くしなやかに育つ路傍の花のように」時代に適応し、進化を続けていくと説く。載っている駄菓子屋はもちろん、近所の店を久しぶりに訪ねたくなる。(十)

読売新聞
2023年5月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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