『うたかたモザイク』
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『うたかたモザイク』一穂ミチ著
[レビュアー] 産経新聞社
直木賞や本屋大賞に相次いでノミネートされた話題の作家による短編集だ。亡くなった婚約者のSNSからメッセージが届く「永遠のアイ」。毎晩ベランダに来る黒猫と戯れる「レモンの目」。事故死した夫が猫に生まれ変わり、妻に拾われる「神さまはそない優しない」など13編を収録している。
物語の設定や出来事はそれぞれ異なるが、全編を通して描かれているのは、多くの人が共感でき、でもうまく名付けられない複雑な感情だ。気持ちに決着のつかないまま終わる物語もある。いろいろな経験と感情の一片が、モザイク画のように人生を形作るのだと思わされる。(講談社・1650円)