『花粉ハンドブック』日下石碧著(文一総合出版)
[レビュアー] 池澤春菜(声優・作家・書評家)
敵を知り、己を知れば百戦あやうからず。ということで花粉だ。にっくきあいつだ。勝手に人の鼻の中や眼(め)の中に入ってきて、頼んでもいないのに存在感を発揮する不倶戴天(ふぐたいてん)の敵。
でも、いざ拡大して見たら、スギもヒノキも思ったより敵対感がない。むしろ丸い。もっとトゲトゲしているのかと思ってたのに。それよりもヒマワリの機雷感や、スギナの胞子の宇宙人感、ホーリーバジルのステンドグラス感がすごい。身近にある植物89科186種、全て違う。それぞれの種がいかに効率よく送粉受粉するか、植物エンジニアリングとでも言うべき創意工夫をこらしている。じっくり見ていると、顔のようで面白い。
ちなみにスギとヒノキは無花粉のものに少しずつ置き換えられているそうだ。日本中の木を植え替えるには、あと数十年かかるそう。共存の道は遠いねぇ……。