江戸時代後期の蘭方医で、大坂の蘭学塾「適塾」の創始者である緒方洪庵(1810~63年)と、その妻、八重の半生を描いた歴史医療小説だ。
当時、天然痘が流行していた。人々が苦しむことのない世の中にしようと、新医術の牛痘種痘を世に広めるべく適塾の教え子らと奮闘する様子が描かれる。看護師としての勤務経験があり、医療現場を知る著者ならではの思いが随所に込められている。
適塾で学び、歴史に名を残した大村益次郎、橋本左内、福沢諭吉、大鳥圭介らが登場し、近代化へ向かう時代の躍動感を感じさせるのも妙味だ。(角川書店・1870円)
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2023年5月28日 掲載
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