『満月がこの恋を消したとしても』
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月夜に読みたい「泣ける小説5選」
[レビュアー] カドブン
帰り道、見上げた空に月を見つけたとき、それが満月であれ半月であれ三日月であれ、ふと立ち止まってしばらく眺めてしまう。そんなときがあります。
今日は上手に伝えられただろうか、受け止められただろうかと、学校や職場や外出先で飛び交っていた様々なかたちの思いを、振り返るとき。誰かと気持ちを伝え合い、心を通じ合うことが得意な人ばかりでは決してないから。今日はうまく伝えられた、とすっきり顔をあげられる人が、どれくらいいるのか。
他人と他人の知らないどうしが、伝わらない気持ちを削り合ったり、表面や表情で取り繕ったりして、どうにか辻褄を合わせている日常のなかだからこそ、伝えてくれた瞬間の、伝わったとわかるそのときの、嬉しさと言ったら。
今日ご紹介するのは、月夜に読みたい、月にまつわる5つのおすすめ小説。思いが伝わることの愛おしさに、静かな感情が押し寄せる物語たちです。
■伝わらないけど伝えたい。誰かの思いに涙する小説5選
■蒼山皆水『満月がこの恋を消したとしても』(KADOKAWA刊)
何度だって 君の恋人になることを選ぶよ――感動の青春恋愛小説
朝起きると、春奈の携帯に3件のメッセージが表示される。自分宛てに送った「私には素敵な恋人がいます!」、三森という男子からの「初めまして。あなたの恋人です」、そして親友・花蓮からの「その人が春奈の彼氏で間違いないよ!」。
高校2年生の甲斐春奈は、満月の日に恋に関する記憶だけが消えてしまう病気を患っていて、この生活にも慣れつつあった。
日曜日、自己紹介も兼ねて三森と出かけることになった。けれど私は気づいていた。三森が本当の恋人ではないことを。そして、本当の恋人が誰なのかを……。
三森はどのような経緯で「偽物」の恋人を演じることになったのだろう。なぜ花蓮は嘘をついているのだろう。本当の「恋人」は、私のことをどう思っているのだろう。
どんな選択をすれば、誰も不幸にならずにすむのだろう――切ない四角関係に涙がとまらない!
「カクヨム×魔法のiらんど」コンテスト受賞作家、待望の新作!
(あらすじ:KADOKAWAオフィシャルHPより引用)
詳細はこちら ⇒ https://www.kadokawa.co.jp/product/322304000757/
■中村航『星に願いを、月に祈りを』(小学館文庫刊)
「100回泣くこと」作者の新たなる代表作
小学生のアキオ、大介、麻里は、夏の学童キャンプで、夜、ホタルを見るため、宿を抜け出し、川に向かう。ようやく川にたどり着いた3人は、偶然ラジオから流れる謎の深夜放送を耳にする。その後、中学で野球部に入ったアキオは、一学年先輩の放送部員・里崎さんを好きになるが、告白できないまま、時間が経過する。高校生になったアキオは、夏休みに、かつてのキャンプ場を訪れ、再び謎のラジオ番組を聞き、あることに気づく。そして、さらなる時間が流れ、アキオたちは大人になった。物語は、大きく動き始める――。
(あらすじ:小学館オフィシャルHPより引用)
■窪美澄『夜空に浮かぶ欠けた月たち』(KADOKAWA刊)
きれいな形でなくてもいい。 きっと誰かが照らしてくれる。
東京の片隅、小さな二階建ての一軒家。庭に季節のハーブが植えられているここは、精神科医の夫・旬とカウンセラーの妻・さおりが営む「椎木(しいのき)メンタルクリニック」。キラキラした同級生に馴染めず学校に行けなくなってしまった女子大生、忘れっぽくて約束や締め切りを守れず苦しむサラリーマン、いつも重たい恋愛しかできない女性会社員、不妊治療を経て授かった娘をかわいいと思えない母親……。夫妻はさまざまな悩みを持つ患者にそっと寄り添い、支えていく。だが、夫妻にもある悲しい過去があって……。
(あらすじ:KADOKAWAオフィシャルHPより引用)
詳細はこちら ⇒ https://www.kadokawa.co.jp/product/322101000286/
■佐藤正午『月の満ち欠け』(岩波書店刊)
第157回直木賞受賞作。三人の男と一人の少女の、三十余年におよぶ人生が交錯し、幾重にも織り込まれてゆく。数奇なる愛の軌跡。
あたしは、月のように死んで、生まれ変わる――目の前にいる、この七歳の娘が、いまは亡き我が子だというのか? 三人の男と一人の少女の、三十余年におよぶ人生、その過ぎし日々が交錯し、幾重にも織り込まれてゆく。この数奇なる愛の軌跡よ! 新たな代表作の誕生は、円熟の境に達した畢竟の書き下ろし。さまよえる魂の物語は戦慄と落涙、衝撃のラストへ。
(あらすじ:岩波書店オフィシャルHPより引用)
■伊与原新『月まで三キロ』(新潮文庫刊)
月や雪や、素粒子までもがいつも誰かを励ましている――。感涙の短編集。
「この先にね、月に一番近い場所があるんですよ」。死に場所を探す男とタクシー運転手の、一夜のドラマを描く表題作。食事会の別れ際、「クリスマスまで持っていて」と渡された黒い傘。不意の出来事に、閉じた心が揺れる「星六花」。真面目な主婦が、一眼レフを手に家出した理由とは(「山を刻む」)等、ままならない人生を、月や雪が温かく照らしだす感涙の傑作六編。新田次郎文学賞他受賞。
(あらすじ:新潮社オフィシャルHPより引用)