人間関係のストレスから自分を守る最適解は?希代の哲人・中村天風さんならこう考える

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

またうっかり、自分を後回しにするところだった

『またうっかり、自分を後回しにするところだった』

著者
中村天風 [著]/中村天風財団 [監修]/アスコム編集部 [編集]
出版社
アスコム
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784776213307
発売日
2024/02/01
価格
1,595円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【毎日書評】人間関係のストレスから自分を守る最適解は?希代の哲人・中村天風さんならこう考える

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

またうっかり、自分を後回しにするところだった』(中村天風 著、アスコム)の主役である中村天風さんについて、本書の冒頭にはこのような解説があります。

中村天風は、稲盛和夫さんや松下幸之助さんなど、

名だたる経営者に影響を与えた人物です。

彼は、軍事スパイや通訳として活躍していた30歳のとき、

当時「不治の病」といわれた肺結核にかかりました。

自分を見失いそうになっていた彼を救ったのが、

インドの山奥、ヨガ大聖者のもとでつかんだ教えです。

病を克服し92歳で亡くなるまで、

それを踏まえた人生の教訓を人々に伝え続けました。(7ページより)

そんな天風さんは、こうも語っていたそう。

人が何と言おうと、

自分を正しく守るのは

自分である以上は、

自分をしっかり守りなさい。(4ページより)

自分は世界にたったひとりの存在であり、その尊い命を守れるのは自分だけ。そのため決して後回しにせず、自分のことをまず第一に考えるべきだということです。

たとえば世間が「いい」というものであっても、自分が「いい」と思えないのなら、周囲の反応など気にする必要はないのです。なぜなら、「自分は自分のままでいい」のだから。

技術の発展した現代においては、不便さに悩まされることは少なくなりました。しかし便利になりすぎたぶん、自分の考えを揺るがすような情報に取り囲まれながら生きるしかなくなってしまったのも事実だといえそうです。

でも、そんななかで自分を優先して生きていくためには、天風さんの話が役立ってくれるのではないかーー。本書は、そうした考え方に基づいてまとめられているわけです。

きょうはそのなかから、第2章「人間関係のストレスから自分を守る」に焦点を当ててみましょう。

怒りや恐れは、いっぺんきりの貴重な人生をスポイルしてしまう

現在ただいま、時間というものはスピードフルに回っているんです。怒ることがあるから怒るんだ、悲しいことがあるから悲しいんだというようなことを言ってたんじゃ、人生に極楽はこないんですよ。

さんざん怒った、さんざん泣いた、さんざんおっかながった後で気が落ち着いてから、「あの時、なにもあんなに怒ることはなかった」「今から考えてみると、それほど悲しいことじゃなかった」なんて思うようなことも、ちょいちょいはないかもしれないけれども一年にいっぺんぐらいありゃしませんか。

怒りや恐れや悲しみに虐げられない心構えが必要じゃないんですか。何物にもかえがたい、いっぺんきりの貴重な人生をスポイルしてしまう。そういうことが、どれだけあるかわからないということを、あなた方、感じませんか?(66ページより)

人間にも動物にも本能が備わっていますが、両者には大きな違いがあります。本能のまま生きるのが動物で、本能から生まれる感情をコントロールし、自らの力で理想的な生き方を追求できるのが人間だということ。

ところが世の中には、感情に振り回されたり、支配されてしまったりする人もいるもの。そして、それが人生を台なしにしてしまうことも考えられるわけです。

しかし、たとえばこちらの事情をわかってくれない上司などに失礼な発言をされたとき、強いことばで抗議したとしたらどうなるでしょう? もちろん、一時的にはすっきりするかもしれません。が、時間が経てば後悔する可能性も大いにあり得ます。

大切なのは、そんなときにも冷静さを保ち、やさしいことばで思いを口にすること。そうすれば、たとえ真意が相手に伝わらなくても、深く後悔することはないに違いないからです。怒ったり悲しんだりするのは簡単ですが、いちいちマイナスの感情をあらわにしていたら、逆に損してしまうのです。(64ページより)

自分の命は自分のもの。人がなんといおうと自分をしっかり守りなさい

すべての人生の出来事は偶然に生じたものじゃありません。アクシデントというものは、自己が知る、知らないとを問わず、必ず自己が蒔いた種に花が咲き、実がなったんです。

「生きる心構え」というものに正しい自覚が、そして反省が、常に油断なくおこなわれていないで生きると、ぜんぜん自分の気のつかないような悪い種を、健康的にも運命的な方向に蒔いてしまうんです。

本当の幸福というのは、人生がよりよく生きられる状態に自分ですることなんだもん。自分でしないで、ほかからしてくれることを待ってるかぎりこやしないよ、この世の中に。

自分の命は自分のものなんだからね。

人が何と言おうと、自分を正しく守るのは自分である以上は、自分をしっかり守りなさい。(86ページより)

世の中で起こるあらゆる出来事は、偶然ではなく必然からなるもの。天風さんはそう述べているそうです。自分に関係することであれば、なにかが起こる可能性を把握しているかいないかにかかわらず、結果として起こったことはすべて自分の責任だともいえるということ。

もちろん、なかには不条理に感じることもあるでしょうし、不可抗力によって起こったことだってあるでしょう。しかし、それでも自分の問題として受け入れるしかないわけです。

当然ながら、時代や社会や他人の責任にするなど問題外。にもかかわらず、自分のことを勝手に不幸と思い込み、卑下したり、ネガティブになったりする人があまりに多い。天風さんはそう嘆いているのです。どうあれ、自分に降りかかった問題は、自分で解決するしかありません。

もちろん、幸福についても同じことがいえるでしょう。幸福は待っていて訪れるものではなく、自分の信念と価値観にのっとって生きるなかで、自らたぐり寄せ、感じるものだということ。同じように、他の誰かが「いい」というものだって、自分が「いい」と思わなければ気にする必要はないのです。

自分の命は自分のもの。大切なのは、それをしっかり守って大切に育み、よりよく生きられる状態に自ら導くこと。それを意識して日々の生活を送っていれば、それが幸福な人生になっていくのでしょう。(84ページより)

このように本人のことばを活かしつつ、そこにわかりやすい解説が加えられているところが本書の魅力。ぱらぱらとページをめくってみれば、思いもかけないひとことを見つけることができそうです。

Source: アスコム

メディアジーン lifehacker
2024年2月8日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク