『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』
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【毎日書評】問題『2本の線香で45分を計るには?』フラットな視点で解く「水平思考」にトライ
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
特別な知識を必要とせず、
問題文を読んで論理的に考えれば答えが導ける。(「はじめに」より)
それこそが「論理的思考問題」と呼ばれるもの。つまり「考える力」さえあれば、誰にでも解ける問題だということです。
『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』(野村 裕之 著、ダイヤモンド社)の著者も述べているとおり、Google、Apple、Microsoftといった世界的有名企業が論理的思考問題を入社試験で出題しているのは有名な話。いうまでもなく、「考える力」を“優秀な人材”を測る尺度として活用しているわけです。
またそれは、現代に必要な「最強のスキル」を鍛えてくれるものでもあるようです。ポイントは、正解を導くために必要な情報がすべて問題文に含まれていること。与えられた情報から別の事実を見抜いたり、先入観を疑って考えないと解けない問題もあるものの、直感で判断せず、「ちゃんと考える」ことで解けるのです。
次々と新たな問題が現れ、過去に得た知識がすぐ役立たなくなる現代に必要なのは「ちゃんと考える力」です。直面したことのない複雑な問題に対し、直感や常識に流されずに状況を冷静に分析し、論理的に正しい判断をすることが重要なのです。
そして、「ちゃんと考える力」のみが問われるのが「論理的思考問題」。だからこそ多くのエリートたちが、最高の知的トレーニングとして論理的思考問題に親しんでいるのでしょう。
そこで本書では、論理的思考問題で高められる「論理的思考」「批判思考」「水平思考」「俯瞰思考」「多面的思考」を高めるために効果的だというさまざまな問題を紹介しているのです。
今日はそのなかから、常識や先入観、過去の事例などにとらわれず、フラットな視点で自由に発想する力である「水平思考」を養うための問題をご紹介しましょう。
先入観を捨てた発想ができるか?
ここに2本の線香がある。
どちらもきっかり1時間で燃え尽きる。
ただし、線香の燃える速度は一定ではない。
線香の9割が10分で燃え、残りの1割が50分かけて燃え尽きることもある。
この線香2本を使って、45分を計りたい。
どうすればいいだろう?(142ページより)
これは2本の線香を使って45分を計る問題ですが、厄介なのは「線香の燃える速度は一定ではない」という条件。これがあるから、「線香を半分のところで折る」というわけにはいかないわけです。つまりは、発想力が大きな意味を持つ問題。
「火をつけたら1時間で燃え尽きる線香」を使って「1時間」以外の時間を計らなければならないとき、それを実現させる方法がひとつだけあるのだそうです。それは、両側から火をつけること。その状態でスタートして線香が燃え尽きたとき、「30分」きっかり経ったことになるわけです。
そこで、まず、
・1本目の線香の「両端」に火をつける
・2本目の線香の「片端」に火をつける
(143ページより)
すると、やがて1本目の線香は燃え尽き、2本目の線香だけが残ります。これが、開始から30分経過したことを意味します。つまり2本目の線香は「30分のぶんだけ燃えた線香」なので、残っている部分は「30分で燃え尽きる線香」なのです。
さて、燃え尽きるのに1時間かかる線香に両端から火をつけた結果、その半分の30分を計測できました。そして手元には、燃え尽きるのに30分かかる線香があります。この線香の、火がついていない部分に火をつける(両端に火がついた状態にする)ことで、2本目の線香はあと15分で燃え尽きることになります。
最初の30分で1本目の線香が燃え尽き、次の15分で2本目の線香が燃え尽きます。そう、この手順を踏むことで、きっかり45分を計ることが可能になるのです。
これは、「線香は片側だけに火をつけるもの」という先入観を取り払って考えることによって解決策が導けることを示した問題。ひらめきを邪魔している常識や固定観念などを意識的に取り除くことで、解決策の糸口がおのずと見えてくるということです。(142ページより)
逆転の発想をする力はあるか?
馬に乗っている2人に、王様がこう言った。
「2人で競争をして、勝った馬の主に宝を与えよう。ただし、後にゴールした方を勝ちとする」
そこで2人は、相手より先にゴールしないよう、のろのろとレースをしていた。
このままでは、いつまでも勝負がつかない。
だが、通りかかった賢者が「あること」を提案した結果、2人はものすごい速度でゴールへ向かっていった。
賢者は何と言ったのだろうか?(148ページより)
これは古くからある有名な問題をアレンジした“発想力だけの問題”で、思考の柔軟性が求められるそう。
勝利の条件は「自分が相手より後にゴールすること」のように見えますが、よく確認してみれば王様は「勝った馬の主に宝を与える」と発言しています。「勝った人」ではなく、「勝った馬」と言っているところがポイント。勝利条件は「自分の馬が後でゴールすること」なので、「相手の馬が先にゴールすれば勝てる」ということです。
したがって、お互いの馬を入れ替えてレースをすれば、その馬で先にゴールしたほうが勝ちになります。王様はこの方法を提案したため、2人は全速力でゴールに向かったわけです。
このように、解決策に辿り着くのが難しく感じたときは、解決の条件を別の角度から眺めてみると、本当に実現しなくてはいけないことがわかります。(150ページより)
「外してはいけないポイント」が明確になると、それ以外の部分は変えていいんだと、思考の自由度が格段に上がるということです。(148ページより)
「問題は複雑である」という感情や思い込みが「論理」を脇に追いやり、問題を複雑にしてしまうのだと著者は指摘しています。
もちろん論理を隠している障害を排除し、問題をシンプルに考えることは簡単ではないでしょう。しかし、だからこそ「論理的に考える力」を鍛える必要があるわけです。そういう意味でも、本書で紹介されている問題を楽しみながら、ぜひとも論理的思考を身につけたいものです。
Source: ダイヤモンド社