『となりの億万長者が17時になったらやっていること』
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【毎日書評】「本物のお金持ち」が成功するために、大切にしている人間関係とは?
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
ひとことで“お金持ち”といっても、そのスタンスはいろいろ。なかには親から莫大な資産を受け継いだとか、ギャンブルなどで一時的に富を手にしたというような人も含まれるでしょう。
しかし、『となりの億万長者が17時になったらやっていること 大富豪が教える「一生困らない」お金のしくみ』(嶋村吉洋 著、PHP研究所)の著者が注目しているのは、「自分の腕一本で大金を稼ぎ、世の中の情勢が変わったり、事業で失敗してお金を失ったとしても、ちゃんと復活を果たして人生を満喫する“本物のお金持ち”」。
そんなタイプをここでは「幸せな億万長者」と定義しているのですが、そこにあてはまる人たちは単なるお金持ちではないのだそうです。
彼らは人的資本・金融資本・社会資本の3つを手に入れて、
「やりたいこと」を
「やりたいとき」に
「やりたい仲間」と
「やりたいだけ」
やることができる、非常に幸せな人々なのです。(「プロローグ」より)
だとすれば、そういう人たちが普通の人とどう違うのかを知りたいところですが、その答えはとてもシンプル。なにしろ、「17時以降の使い方が平均的な人とかなり違う」ということだというのです。
たとえば定時が17時で、そのあと自分を高めるための予定を入れていたとしましょう。そんなタイミングで上司から残業を頼まれたとき、「予定があるので無理です」と断るか、仕方なく残業を受け入れるか?
どちらを選ぶかで未来は大きく変わってくるというのです。いいかえれば、きょうの延長線上に未来があるということ。
幸せな億万長者は、「この選択は、自分にとって効果的なのだろうか?」とつねに考えているものだということです。きょうはこうした考え方に基づく本書の第2章「社外の『仲間』が仕事とお金をもたらしてくれる」のなかから、仲間とつくる「コミュニティ」についてのいくつかのポイントを抜き出してみましょう。
定時になったら集まる「基地」を決める
この文章を読んでいる方々の多くは、「いま、会社員である」という立場にあるのではないでしょうか? もしもそうなら、そして王道での成功ルールを目指しているなら、まずは「いつでも会社から独立できる人間になること」を目指すべきかもしれないと著者は述べています。
ただし、ここでいう「独立する」ということは、転職とは違うようです。いつか独立したいのであれば、会社にいる間にそれができるだけの基盤をつくっておく必要があるということ。
ちなみに、そんな思いをもとに「最強のコミュニティづくり」のノウハウを明かしている著者の原点は、16歳のときにみんなでファミレスに集まったことだったのだとか。
当時はスマホもない時代。携帯だって普及していたわけではありません。
私はまだ10代だったし、今のあなたと状況はまったく異なるでしょう。
でも、ここには共通した大事な要素があります、
それはまず「集まる場」を作るということです。(81ページより)
集まる場がなければ、仲間ができるはずもないのです。もちろんオフィスも「人が集まる場所」ではありますが、会社のような機能組織の場で別のコミュニティをつくっていくのは困難。だからこそ、みんなが自由に出会え、話せる場をつくることが出発点になるのです。
もちろんファミレスや居酒屋でも、レンタルスペースでもOK。あるいは、ネットを利用してコミュニティをつくるという手段もあるのではないでしょうか?(80ページより)
とにかく3人、価値観の合う人との出会いを待つ
著者は自身の感覚として、「一緒にコミュニティを大きくしよう」と本気で思える仲間が3人できれば、そこからどんどんコミュニティは発展していく可能性があると考えているそうです。しかし、その3人がなかなか集まらないのが難しいところでもあります。
そこで大切なのは、最初は「質」を求めるのではなく、集める人の「数」にこだわること。何事も量から質を生むのです。
私たちは、「この人が仲間になったら心強いな」という人に執着しがちですが、たいていそういう相手はコミュニティには入りませんし、定着しません。
また、「付き合いが長ければ、仲間になるのか」と言えば、そうでもないことが多いと感じます。(89ページより)
意外な気もしますが、これは著者の実体験に基づく考え方なのだそうです。親しくて信頼できる相手だからといっても、コミュニティづくりに賛同してくれるとは限りません。そこで、「たくさんの人にコミュニティの価値を伝え、価値観の合う人だけを残す」という作業を延々と続けていくことが大切だというのです。(88ページより)
時間、お金、能力を惜しみなく人のために使う
コミュニティを運営するうえで重要なのは、メンバーに「なにかを提供すること」だと著者は主張しています。
たとえば、自分を売り込むのは熱心だけど、誰かが主催しているイベントのスタッフはやらないし、興味がないセミナーなどには参加をしない人がいたとします。
そういう人は、
「あの子は自分のことばかりで、他人にはまったく力を貸してくれないね」
なんて思われていきます。
だから「自分が得をしたい」のであれば、「誰かに得をさせること」を、まずは考えなければいけません。
私はこれを「究極の利己主義」と呼んでいます。
自分が仲間にしてほしいことを、まず自分が行うのです。
そして神経質なくらい、自分が行なったことの結果と評価を気にして改善する。
そのくらいの人のほうが、成功することが多いと思います。(106〜107ページより)
つまり、なにかを人に提供したのであれば、最終的には自分に返ってくるものだということなのでしょう。(105ページより)
上記からもわかるように、本書に書かれていることは簡単で、しかも再現性のあることばかり。それらを実践して「正しい選択」を行えば、必ず幸せな億万長者になれると著者は記しています。実際に億万長者になれるかどうかは別としても、いろいろな意味でビジネスパーソンとしてスキルアップすることはできるかもしれません。
Source: PHP研究所