『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』
- 著者
- ビル・パーキンス [著]/児島 修 [訳]
- 出版社
- ダイヤモンド社
- ジャンル
- 社会科学/社会科学総記
- ISBN
- 9784478109687
- 発売日
- 2020/10/01
- 価格
- 1,870円(税込)
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老後に後悔する人、しない人の「お金の使い方」決定的な違い
[レビュアー] 頼藤太希((株)Money&You代表取締役/マネーコンサルタント)
2020年に刊行されて以来、ヒットし続けている異色のマネー本がある。『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』(ビル・パーキンス著、児島修訳、ダイヤモンド社)だ。
直訳すると「ゼロで死ね」というタイトルの本書は、お金の“貯め方”ではなく“使い切り方”に焦点を当てた本になっている。
『はじめての新NISA&iDeCo』など90冊もの著作をもつマネーコンサルタントの頼藤太希氏(株式会社Money&You代表取締役)も、本書に大きな影響を受けた一人だ。
お金のプロである頼藤氏も、限度はあるものの「お金は使ってこそ価値がある」と共感する。本書に書かれた「記憶の配当」という考え方から、なぜお金を使った方が人生は豊かになるのか、頼藤氏に解説してもらった。
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「記憶の配当」を意識する
同書では、「思い出や経験は、死ぬまで我々に配当を与えてくれるものだ」とも書いています。
たとえば、お金をかけて20代のうちに世界一周旅行をしたとします。その旅行から得た経験ポイントは、以後いつまでも記憶の中に残り続けるでしょう。そして、その記憶を思い出して楽しい気持ちになることができます。さらに、家族に思い出話をして楽しんだり、他の人に話して共有したり、ときにはその経験を生かしてアドバイスをしたりすることもあるかもしれません。
こうした、経験から引き出されるポジティブな連鎖反応のことを、同書では「記憶の配当」と呼んでいます。
もし、70代になってから世界一周旅行をしたら、それはそれでいい経験・思い出になるとは思います。しかし、記憶の配当を得る時間は20代のときよりもずっと少なくなってしまいます。仮に90歳まで生きるとして、20代の経験からは約70年間にわたって記憶の配当が得られるのに対し、70代の経験からは20年間しか記憶の配当が得られないからです。
さらに、記憶の配当は、再投資することによって複利効果が得られます。複利効果は、何も投資だけに使えるものではありません。経験にも活用できます。今しかできない若いうちの経験に、お金と時間を集中させたほうがのちのちの自分のために良いというわけです。
経験を楽しむ能力は加齢に合わせて減っていく
若いうちの経験にお金と時間をかけたほうがいい理由はもうひとつあります。それは、経験を楽しむ能力は加齢とともに減っていくからです。
20代と70代の世界一周旅行では、できることにも違いがあります。20代であれば、アクティブにいろいろなところを巡り、そこに住む人たちと交流することもできるでしょう。多少無理をしても、若さや体力で乗り切ることができます。
しかし70代の世界一周旅行では、そうはいきません。確かに、20代よりもお金は持っているかもしれませんが、健康ではないかもしれませんし、できることも限られてしまいます。何より、そうするだけのバイタリティーを高齢になっても持ち続けられる人は、それほど多くないでしょう。
〈経験を楽しむ能力は年齢が上がるにつれて減少〉
図1は、経験を楽しむ能力が、年齢が上がるにつれて減少していく様子を表したものです。いくら健康状態がよい人でも、年齢が上がれば身体的な能力が低下していきます。健康状態がよくない人なら、その低下がもっと早く起こります。70歳、75歳などと高齢になってからでは、経験を楽しむ能力はだいぶ低下してしまいます。
若いうちにさまざまな経験を積んだほうがいいというのがわかりますよね。