『仕事も人生もスーッと整う 幸せになる練習。』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
【毎日書評】仕事の幸福度を上げる!幸せに働くために必要な4つのアクション
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『仕事も人生もスーッと整う 幸せになる練習。ウェルビーイング73の行動リスト』(前野マドカ 著、すばる舎)の著者は、「幸福学」について研究している人物。
これまで「なんとなく」というレベルで語られることが多かった「幸福」という分野について、理論や研究を用いて科学的なアプローチを続けているのだそうです。
普段は企業や自治体での講演やセミナー、ワークショップなどを通じ、そこで働く人たちの「ウェルビーイング=幸せ」を高めるためのサポートをしているのだとか。
ところでこの「ウェルビーイング」ということばを働く私たちの日常にあてはめていると、どんな状態になるのでしょうか?
この点について語るにあたって著者は、「仕事もプライベートもまったくうまくいかない人が、やけ食いしているところ」を引き合いに出しています。その姿は少し苦しそうに見えるかもしれませんが、本人は「食べているときだけはハッピーだ」と感じているはず。だとすればその「幸せ」という感情は、決して嘘だとはいい切れないでしょう。
でも、多くの人が「幸せ」という言葉からイメージするのは、やけ食いをしている人ではありません。そうではなく、心も体も大きなトラブルがなく、周囲に頼れる人がいる(社会的なつながりを持っている)といった状態の人ではないでしょうか。(「はじめに 『幸せにはたらく』ってどういうこと?」より)
そのように、心と体、人とのつながりが「よい状態」にあることを、幸福学では「ウェルビーイング」と呼ぶわけです。一時的な快楽や幸運ではなく、人生において長期にわたって持続するような幸せのこと。
たとえば仕事に関していえば、同僚や上司へのイライラやモヤモヤがないこと、チームメンバーを信頼できていること、自分にしかできない仕事があることなどがそれにあたるわけです。
これからの時代は、私たちのやる気や希望、幸福度を高めるウェルビーイングがますます注目されるキーワードになっていくそう。そんな考え方に基づく本書のなかから、きょうは1「仕事で幸せになる。」に注目してみたいと思います。
自分の「強み」を探す
キャリアについて「あなたの強みは?」と聞かれ、「自分に強みなんてあるのだろうか?」と戸惑った経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。そもそも、「強み」とはどのようなことを指すのでしょうか?
強みは他人からの評価ではなく、自分自身の感覚で見つけるもの。「やってみよう」と思えること、心がワクワクすることは、すべて「強み」です。たとえ、チームで一番でなくても、あなたが強みだと思うなら、堂々と宣言してしまってよいのです。(34〜35ページより)
楽しめるのであれば下手でもOKだし、一度も挑戦したことがなかったとしても、やってみたいと思えるのならそれだけで充分だといいます。なぜならそういった思いは、自分自身にとっての“働く幸せ”をつくるヒントになるはずだから。
どうしても強みが見つからないという場合は、ウェブ診断を受けてみるのもおすすめだとか。その結果として自分の強みが見つかったら、それを活かせそうな業務を見つけてチャレンジしてみればいいわけです。(34ページより)
ときには難しい仕事にチャレンジ
仕事でしんどい思いをするのは、誰にとっても嫌なもの。とはいえ、慣れた仕事ばかりを続けていたのでは成長が止まってしまいます。そこで著者は、あえてハードな仕事に挑戦してみることを勧めています。そうすれば、新たな視点や知見が身につく可能性があるからです。
ただし、挑戦しがいのある仕事にチャレンジするときは、次の2つのポイントに気をつける必要があるといいます。
1つ目は、心身ともに余裕のあるタイミングを見定めること。ゆとりがない状態で大変な仕事に取り組むと、いつもより失敗する可能性が高まります。
2つ目は、ちょうどいい難しさの課題に挑戦すること。今の環境や実力にまったく見合っていない、ハードすぎる仕事では、心身ともに疲れきってしまいます。(38〜39ページより)
さらには、仕事を受けるかどうかの見極め方もあるそうです。それは、その仕事にチャレンジすることを考えたとき、ワクワクして「なんとかなる」と思えるかどうか。日々の業務に新たなことをプラスワンする程度の挑戦であるなら、成長と達成感をベストの配分で味わえるはず。(38ページより)
フロー状態で夢中になって取り組む
作業に没頭しきっていて、気づけばあっという間に時間が過ぎていた――。そんなときがあるものですが、それは「フロー」と呼ばれる状態。仕事がつまらない、退屈だと感じているような状況とは対照的であるだけに、できることならずっとフロー状態でいたいものです。
フロー状態に入るために必要なのは、作業の意味や目標、そしてちょうどいい難易度。つまり、やるべきことが明確で、やる意義のあるタスクを、やりこなせている、という感覚があるかどうかです。(40〜41ページより)
好きな作業だとフロー状態に入りやすいのは、この条件を満たしやすいからということです。(40ページより)
自分のことを知る
職場でチームや組織への貢献ばかりを考えるあまり、「自分がどうしたいか」が後回しになっているというケースもあるかもしれません。しかし当然ながら、自分のことを知ることも重要。
「セルフ・アウェアネス」という言葉があります。自己認識のことで、「自分のことを知る」、そして「他人が自分のことをどう思っているか知る」ことをいいます。自分の思考、感情、欲求、強み・弱み、価値観、他者からの評価、成育歴……。(52ページより)
それらについて知ることは、望むキャリアを実現するためには欠かせないというわけです。(52ページより)
基本的には女性に向けられて書かれたものですが、実質的には性別の差なく、すべてのビジネスパーソンに訴えかける内容になっているところが本書の魅力。より幸せな毎日を生きていくために、参考にしてみてはいかがでしょうか?
Source: すばる舎