『ディズニーランド&ユニバーサルスタジオジャパンで学んだ 新しいリーダーの教科書』
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【毎日書評】ディズニーとUSJで学んだ、リーダーに必要な3つの役割とは?
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『ディズニーランド& ユニバーサル・スタジオ・ジャパンで学んだ 新しいリーダーの教科書』(今井千尋 著、あさ出版)の著者は日本で唯一、東京ディズニーリゾート®とユニバーサル・スタジオ・ジャパン®で人材育成・人材開発を担当してきたという人物。
現在はそうした経験をもとに、企業、自治体、経営者団体、学校団体などにおいて研修や講演、現場指導、人事・人材開発コンサルティングを行っているのだそうです。いわば、人材育成・人材開発のプロフェッショナル。
ところで著者には、そうした活動を続けてきたなかでわかってきたことがあるのだとか。それは、「リーダーに必要なのは特別な才能ではなく、“リーダーシップ”を発揮できるかどうか」ということ。
リーダーとは、あくまで業務を円滑に行うための「役割」。チームやメンバーが自身の能力を最大限活用し、働きやすい環境をつくるために動くひとのことであり、だからこそ次の3つのテーマに取り組むべきだというのです。
1 思考改革
2 場づくり
3 コミュニケーション
(「Entrance リーダーに特別な才能はいらない」より)
つまり本書では、これら3テーマを柱としながら、「これからの時代のリーダーの仕事とはなにか」について解説しているわけです。だとすれば改めて、「リーダーとはなにか」という根本的な問題について再認識しておきたいところ。
そこできょうは第1章「『リーダー』という仕事」に焦点を当て、“リーダーの基本”について考えてみたいと思います。
「リーダー」とはなにか
リーダーという仕事について悩んでいる方の大半が、「リーダーとはなにか」「リーダーの仕事とはなにか」を理解できていないと著者は指摘しています。しかしリーダーとして仕事をするためにはまず、「リーダーの仕事の根幹はなにか」について理解しなければなりません。
では、そもそも「リーダー」とはなんなのでしょうか? この問いに対して著者は、興味深い見解を述べています。
私は、リーダーの仕事を一種の“伝統芸能のようなもの”だと考えています。
人類が地球上に現れ、集団ができたその時から、常にリーダーは存在してきました。各時代のリーダー像は、先人(先輩・上司)より受け継がれ、在り方を学び、状況に応じて実践したことを踏まえて、次の世代につなぐ――。こうしてリーダーの歴史は続いてきたからです。(18ページより)
現場のチームを率いた各時代のリーダーたちがリーダーシップをとってきたからこそ、社会も会社も、組織も家庭も続いてきているということ。そういう意味でリーダーとは、時代を引き継ぐために当番で回ってくる「役割」。したがってリーダーになる人は、完璧でなくてもよく、特別な才能も必要ないわけです。
リーダーに求められるのは、その時代に合わせて自分の力を最大限発揮し、次の世代にバトンを受け継ぐこと。つまり、「リーダー不適合者」などいないのです。「仕事の根幹とはなにか」に関する先人の知恵や技術を理解し、それを現代で自分らしく生かすために考え、行動すれば、誰しもがリーダーになれるのですから。(16ページより)
リーダーの3つの役割
冒頭でも触れたとおり、部下やメンバーを能動的にするためにリーダーが行うべきことは「思考改革」「場づくり」「コミュニケーション」の3つだと著者は述べています。それぞれについて確認してみましょう。
最初の「思考改革」とは、リーダーや部下といったそれぞれの立場を見定め、考え方や捉え方を明確に可視化し、理解・認識したうえで、その立場にふさわしい言動を意識して行うことだそう。
仕事とは何か、働くこととは何か、目的、目標、成果とは何かについて、それぞれの立場で理解し、大切にしている価値観や規準、判断軸、お互いの役割を全うするために、それぞれの立場から生み出される思考を整え、相乗効果を発揮する連携を図るのです。(24ページより)
いわば「成果」と同時に、「成長」にもコミットするという思考であるということです。では、2つ目の「場づくり」とは?
部下が自分の成長を実感しながらワクワク働くことのできる場(環境)、さらには、部下の成長による言動を通してお客様が愛着を持ち、リピートしてくれる場(環境)を、リーダーが“意図的”につくり出すことです。(24ページより)
そうすれば結果的に、働きぶりがお客様から評価されるなどプラスの効果が生まれます。するとやりがいが高まるためメンバーもその必要性を感じ、主体的に“成果につながる環境づくり”に参加してくれるようになるというわけです。
そして3つ目が、良質なコミュニケーション。部下が安心・安全に仕事に集中するためには、なにが大切でしょうか? 著者によればそれは、その仕事を行う目的や意義などを理解したうえで、「自身のすべきこと、できること」に取り組めること。また成長するには、強み、成長課題、目指すべきゴールなど、あらゆる情報を上司と共有し合えることが必要。
それには、お互いの共通言語(仕事を効率的・効果的に運営するために使う独自の言葉)や、その言葉の裏側にある意味づけ(解釈)、規準(どこまでやるのか)、手順(どのようにやるのか)、達成状態(ゴールとして目指すべき状態)を丁寧に分かち合い、お互いの行動やその行動の先にある業務成果(達成ゴール)を、認識のズレが少ない状態にする良質なコミュニケーションが欠かせません。(25ページより)
この3つを実践することで、リーダーとしての素晴らしい力を社内外に向けて発揮できるようになるということです。(21ページより)
リーダーに欠かせない「リーダーシップ」の「シップ」とは、すなわち「能力」。そして能力は筋トレやスポーツと同様に、目的を正しく理解して正しいトレーニングを積めば、誰もが身につけられるものでもあります。本書を参考にしながら、リーダーとしての資質を高めてみてはいかがでしょうか?
Source: あさ出版