『結果を出す組織は、どんな会議をしているのか?』
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【毎日書評】なんとなくやっている「残念な会議」を「価値を生む会議」に変えるには?
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『結果を出す組織は、どんな会議をしているのか?』(相原秀哉 著、フォレスト出版)の著者は、前職のIBM在籍時から、業務改善のコンサルティングを生業としているという人物。独立後の現在に至るまで、業界や規模を問わず多くの企業で3,000以上の会議に出席してきたのだそうです。
当然ながら、そのなかには「しっかりと価値を生む会議」もあれば、「価値を生むことができなかった会議」もあったといいます。興味深いのは、そうしたさまざまな会議を体験してきた結果、「会議はチームスポーツと同じ」であるという結論に至ったという点です。
参加者個人のスキルに頼るのではなく、会議を成功に導く方法を理解し、実践することによって勝率を上げる、すなわち会議の目的を達成して成果を出す確率を上げることができるのです。(「はじめに」より)
各人がバラバラに動いているだけでは、組織全体の成果は個々人の成果の総和にしかなりえないはず。つまり、それは「足し算」です。しかし、人が集まって会議をし、そこで出た知恵をもとにしながらうまく動けるようになれば、成果は何倍にもなります。こちらは「かけ算」。
つまり端的にいえば、「かけ算」の会議を実践することが望ましいのでしょう。
とはいえ会議をしたとしても、やり方が適切でなければ望んでいたような成果は得られないかもしれません。それどころか、ひどい場合はマイナスの結果になってしまうことも考えられます。
つまりはそれほど、“会議で成果を上げられるか否か”は組織全体の業務に大きな影響を与えるということ。そこで本書において著者は、これまで重ねてきた経験を軸としながら、「残念な会議」を「価値を生む会議」へと変貌させるための方法を体系的に、そして詳細に解説しているのです。
きょうはそんな本書のなかから、第1章「始まる前に半分終わらせておく」に焦点を当ててみることにしましょう。
準備段階で会議を成功に導く
前述のとおり多くの会議に参加するなかで、「準備不足の会議があまりにも多い」と感じてきたという著者は、「準備段階で会議を成功に導く算段を練っておく」ことの重要性を強調しています。
「会議をどう成功へと導くのか」を事前に考え抜き、入念に準備をしておけば、会議の開始時から実のある議論に集中することが可能。そのため、求められる成果を上げることができるというわけです。
スポーツの世界では、プロフェッショナルはもちろんアマチュアであっても、ある程度レベルの高いチーム、個人は、試合に勝つために事前に作戦を立てたり、コンディションを整えたりして入念に準備をして臨むことが当たり前になっています。
会社で働くビジネスパーソン、いわば「ビジネスのプロフェッショナル」も会議という重要な意思決定の場に臨む際は、成果を上げるために準備をしておくことは当たり前である、という感覚を持ちたいものです。(18ページより)
いわばこれこそが、会議に際してまず意識しておきたいこと。すなわちスタートラインです。(16ページより)
ゴール(狙い)を定める
これまで著者が見てきた会議の多くは、「以前からやっているからとりあえず開催する」というものだったそう。つまり、「そもそもなんのために開催するのか?」「なにを達成したら成功といえるのか?」が不明瞭な状態のまま開かれていたということです。
しかしそれだと、参加者はどこを目指したらよいのかわからなくなってしまいます。お互いにいいたいことをいい合うだけで、きわめて生産性の低い会議になってしまう可能性が大きくなるのです。サッカーやバスケットボールにたとえるなら、ゴールが存在しない状況下で、両チームの選手がひたすらボールの奪い合いをしているようなもの。
したがって目標を達成するためには、「どこまでを目指すのか?」というゴールをあらかじめ決めておくことが大切なのです。
ゴールを何にするかによって、会議のアプローチ(進め方)や成否の判断が変わってくるはずです。(22ページより)
なお、会議のゴールを設定する際には、“定めた目的を達成するための道のり”を俯瞰したうえで、「その会議を目的達成のどこに位置づけるのか」という全体観を意識して行うことが重要。そうでなければ、「会議のゴールを設定しても、目標達成までのプロセスを考慮すると不十分である」ということになりかねないからです。(19ページより)
ストレッチ目標と最低防衛ライン目標
また、狙いを定める際には「できればここまで達成したい」というストレッチ目標と「最低限、これだけは死守したい」という最低防衛ライン目標の2つを設定しておくことをおすすめします。(23ページより)
会議には考え方の異なる複数人が参加するため、程度の差こそあれ、なんらかの不確実性が伴います。そのため、スタート段階から議論が紛糾するようなら、あらかじめ設定しておいた「最低防衛ライン」を死守できるようにファシリテーションをし、議論が円滑に進むようであれば、ストレッチ目標の達成を全員で目指すようにするべきだということ。
まずは「その会議で何を目指すのか?」、そして「どこまでを目指すのか?」を準備段階で考え抜いたうえで、会議への招集時に参加者に伝えましょう。
また、会議の冒頭でも必ず「この会議の目的は何か?」「この会議のゴールは何か?」ということをしっかり説明・周知したうえで議論に入るようにしましょう。(23〜24ページより)
そうすれば、参加者が同じ方向を向いて議論をする手助けになるはず。つまり、結果的に意義のある会議になる可能性が高まるということです。(23ページより)
著者によれば本書の特徴は、短時間で効果的に成果を出すために、会議の常識とされていたことをあらためて問いなおしている点だそう。現状の会議の進め方に疑問を抱いている方、重要な会議を取り仕切ることになった方、組織の力によって業績を上げたいと考えている方などにとって、大きく役立ってくれそうな一冊です。
Source: フォレスト出版