『鳥が人類を変えた』
- 著者
- スティーヴン・モス [著]/宇丹 貴代実 [訳]
- 出版社
- 河出書房新社
- ジャンル
- 歴史・地理/外国歴史
- ISBN
- 9784309229133
- 発売日
- 2024/02/27
- 価格
- 3,190円(税込)
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『鳥が人類を変えた』スティーヴン・モス著
[レビュアー] 遠藤秀紀(解剖学者・東京大教授)
高校生の頃、ロバート・シルヴァーバーグの『地上から消えた動物』で、珍鳥ドードーの絶滅を学んだ。SF界の巨匠の豊かな表現によって鳥獣のノンフィクションが書かれるのが、西欧文学の底力である。博物学が人々の好奇心を育むのは、こうした著作を蓄積できる欧米の文化的成熟ゆえだと痛感した。
本書の著者スティーヴン・モスは英国のテレビ番組プロデューサーだ。いまの日本だと、コンプライアンスやら説明責任やらに忙殺される職種だろう。番組制作者が筆で知を支える土壌がなかなか育たないわが国の貧困が、口惜しい。
章ごとに、ドードーはもちろん、ハト、シチメンチョウ、フィンチ、ハクトウワシなど、鳥たちが躍動する。人類は鳥をときに愛し、ときに食べ、ときに拝んできた。自然や生き物を見つめる人々の目を、こうした本の書きぶりが刺激し、培っていくに違いない。
実学だ理系重視だ卓越だと文教施策に乱暴な言葉を並べるわが国に、自然界を知的に楽しむ表現世界は、いつになったら成り立つのか、行間から問われた思いだ。宇丹貴代実訳。(河出書房新社、3190円)