『読むダンス』
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日韓アイドルの客観的な基準とは?
[レビュアー] 田中秀臣(経済学者)
人気ユーチューバーが書いたARATA『読むダンス』は、とても野心的な著作だ。日韓のアイドルたちのダンスについての解説を、著者の動画サイトでの実況さながらに書籍の形で再現している点がまずユニークだ。本書のふつうの楽しみ方は、J-POPやK-POPのアイドルの代表曲の動画をみながら、ダンスの見せ所を楽しむガイドの役割だろう。この曲の何分何秒では、このアイドルたちの世界観と身体性の素晴らしさと、また人生を味わえ、と丁寧に教えてくれる。
だが、それだけではない。ダンスを具体的に語る“客観的な基準”を読者に提供しようという前人未踏の試みが、実は本書のもっとも野心的なところだ。アイドルたちのダンスのどこが「良いダンス」なのか、つまりダンスが人を感動させるのはなぜなのかを、演者たちの個性に寄り添いながら客観的に語り尽くす。同時に、ダンスにおける肉体の使い方のプロにしかわからないポイントや、またすごさを必死に記述している。こんなことは誰もいままでアイドルのダンスについてやらなかったことだ。おそらく今後はこの本での記述が、アイドルたちのダンス評価の一基準になるはずだ。それだけのことを本書はやりとげている。
もちろんプロではない読者が楽しめる工夫もある。特に「芸術性」「グルーヴ感」などを表したチャートは便利だ。これに読者なりの評価も書きこめる。その上で、さらなるダンス批評の高みを読者も目指せるだろう。