『町内会』
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ムラの年寄り以外にも町内会は大テーマ
[レビュアー] 林操(コラムニスト)
町会、部落会、自治会、区会、常会、地区会、地域会、その他いろいろ。名前は場所ごと時代ごとにさまざまなれど、コレすべて町内会のこと。ざっくり言えば年寄りほど・田舎ほど関係が深く、衰退基調にあるはずの枠組みです。が、都知事選でもわかったとおり、東京でさえ“老いた田舎”であるのがこの国の現実。町内会もまだ大きな存在で、深掘りしてくとニッポンが浮かび上がってくる度合いはPTAや消防団より高い。
だもの、町内会モノ新書は多く、中川剛の『町内会 日本人の自治感覚』(中公新書/1980年)は名著だし、次の世代の研究者・玉野和志による最新の『町内会 コミュニティからみる日本近代』がまた面白い。
地縁に血縁までが入り混じった前近代のムラが、明治以降、国主導で再編され、相互監視の隣組を生み出した国家主義が敗戦で破綻した後、戦後民主主義の中で町内会が台頭し、成長の終わりと個人主義の強まりで加入率は低迷……という歴史が読ませるし、行政の下請け機関でありつつ行政にモノ申す機能も持つ町内会の衰退は住民自治の衰退であることが見えると、町内会が田舎の年寄り限定のテーマでないこともわかる。
ただ、この本は研究書系。町内会にとって悩みどころである持ち家派と賃貸派の差がスルーされてたりするゆえ、町内会の役員の順番が回ってきて困ってるアナタならまず、実用書系の紙屋高雪『どこまでやるか、町内会』(ポプラ新書/2017年)からどうぞ。